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2014 Fiscal Year Research-status Report

多民族社会での制度構築に対する社会システム論からの貢献

Research Project

Project/Area Number 24653118
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

河村 倫哉  大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (80324870)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2016-03-31
Keywords国際情報交換 / ナイジェリア / レバノン / 南アフリカ / 多極共存 / 民族対立 / 社会資本
Outline of Annual Research Achievements

多民族共存について多極共存型と向心型という二つの方法の長所・短所を明らかにし、両者の統合を図った。三年目はそれを背景に、南アフリカ、レバノン、ナイジェリアで共存がうまくいかない原因を明らかにした。共存のためには信頼や安心、情報、協力など、目にはとらえにくい社会的資源が人々に平等に保証されていなければならない。人は自分たちの文化が承認されることでこれらの資源を確保できる。多民族社会でいきなり普遍主義的な制度を構築しようとすると、身の回りの社会的資源が破壊されてしまう恐れがある。そこで、最初は個々の民族の地位を認める必要がある。
しかし、それだけでは民族を超えた信頼、情報、協力などは手に入れにくい。そこで、①各民族の指導者同士が協調の実績を積み重ねること(多極共存)、②指導者だけでなく有権者も交流できるような政治的仕組みを作ること(向心型)、③政治以外に経済や教育などで民族を超えた交流を促進することが、考えられる。
レバノンの場合、かつては資本主義が高度に発達し、文化を超えた経済交流が進んだように見えたが(③)、指導者間で協調の紐帯をうまく作り出せず(①)、集団間の人口バランスの変化、格差の拡大、個別の外国勢力との結びつきによって共存が崩壊した。
ナイジェリアの場合、②の取り組みを図っているもののあまり進んでいない。そして政治の比重が大きすぎ、経済などの自立性が乏しい。そのため民族を背景に政治的権力を握ろうという動きが過剰になり、共存を図りにくい。
南アフリカの場合、民族を超えた政治的仕組みを残しながら(②)、部分的に多極共存的要素を導入してきた。最大の問題は人種間対立だが、資本主義が発達しているため(③)、階級対立に近いものになっている。現在のところ他の国よりは共存できているが、政府のパフォーマンス自体はあまり高くないので、その不満が今後民族に結びつく可能性は否定できない。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

第三年度の目標は、多民族共生のための二つの方法、すなわち多極共存型と向心型を理論的に統合すること、そしてそれに照らして、南アフリカ、レバノン、ナイジェリアについて、共存がうまくいかなかった原因を探り、それを克服するための提言を行うことであった。これらはおおむね順調に進展していると思われる。
二つの方法を統合するための視点として、信頼、安心、情報、協力など目に見えにくい社会的資源の平等な分配という基準を明らかにできた。多極共存型は身の回りの見えにくい社会的資源全体の確保を、向心型は他の民族との間での社会的資源の共有を行うという点で優れている。しかし一方のメリットは他方のデメリットでもある。紛争地域では多極共存を最初に採用するのが望ましいが、その上でその不備を補う方法を考えなければならない。それについても、①エリート間の協調の実績、②エリート以外の政治的交流の仕組み、③政治以外の交流の促進、を明らかにすることができた。
ナイジェリア、南アフリカ、レバノンについては第二年度に実地調査を済ませていたので、そこで得られた認識と照らし合わせて、これらの地域が①~③の何について問題があったため、共存がうまくいかないかを明らかにすることができた。

Strategy for Future Research Activity

理論的に統合された観点から、南アフリカ、レバノン、ナイジェリアについて、なぜ共存がうまくいかなかったのか、その原因を明らかにすることができた。しかし、そのような問題を克服するためには、どういう政策を追求すれば良いのかが、まだ明らかになっていない。今後はそれを明確にしていきたい。その際には、現地に対して実効性を持った解決となることを留意していきたい。また、それが紛争地一般に対する平和構築の一助となるようにしたい。
得られた成果は外国で発表することを考えているので、英文への翻訳や校正に研究費を使用する予定である。

Causes of Carryover

レバノン、ナイジェリア、南アフリカでの実地調査はすでに済ませ、それぞれの地域において、多極共存型と向心型という政治制度の、どの部分がどれだけ採用されているかを明らかにした。見えにくい社会的資源の平等な分配という観点から、これらの国々での取り組みがどのような点で不十分であったために、共存がうまくいかなかったのかも、明らかにすることができた。しかし最後に、これらに国々に多文化共存に向けての実効的な政策提言を行打つ盛りであったが、それがまだ十分詰めきれていない。そのために、さらに研究を進める必要が生じた。
また、研究成果を海外で発表する予定だが、英語での執筆がまだ完成していない。

Expenditure Plan for Carryover Budget

有効な政策提言を詰めるために、再度文献を調べたり、内外の研究者と話し合いを行う必要がある。文献の購入や通信費に未使用額を当てたい。さらに、成果を海外で発表するために、英文校正にも使用したい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] アファーマティヴアクションと社会資本2014

    • Author(s)
      河村倫哉
    • Journal Title

      国際公共政策研究

      Volume: 19巻1号 Pages: 1-14

    • Open Access

URL: 

Published: 2016-06-03  

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