2012 Fiscal Year Research-status Report
都市における高齢者主体の「農」の活動とアクティブ・エイジングに関する研究
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24653122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
松宮 朝 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (10322778)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市農業 / 耕作放棄地 / 市民農園 / コミュニティ / 長久手市 / 日進市 / NPO / 有機農業 |
Research Abstract |
研究計画では、(1)国内、国外におけるエイジング、都市農業研究のレヴュー、歴史的展開の分析、(2) 東京都の練馬モデル、埼玉県の見沼田んぼにおける多様なアクターによる「農」の活動都市農業先進地域の調査、(3)愛知県における都市農業先進地域の調査、(4)高齢者主体の都市農業集団の量的調査の準備作業の4つを挙げた。 (1)については概ね完了し、松宮朝,2013,「都市における農の活動をめぐって」『愛知県立大学教育福祉学部紀要』61:123-134.というレヴュー論文に成果報告をまとめた。 (2)については、見沼田んぼ関係者からのレクチャーを受け、関東圏の先進地域の先行研究の収集と調査を実施した。これも上記論文にまとめている。 (3)は長久手市、日進市の調査を実施した。長久手市、日進市のNPO法人で参与観察を行い、そのフィールドワークの一部は、松宮朝,2012,「『サクセスフル・エイジング』と『農』の活動」『社会福祉研究』14:23-31.、碓井崧・松宮朝編著,2013,『食と農のコミュニティ論』創元社.松宮朝,2013,「都市部における非農業者主体の「農」の活動の展開」『サステイナビリティ研究』3:85-97.にまとめている。この参与観察は、今年度も継続予定である。 (4)についても、(1)の作業を進めることと並行して行い、農林水産省による調査データ、既存資料から大まかなリストアップ作業を終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的としては、都市部における高齢者主体の「農」の活動が成功するモデルを提示することとした。高齢者の社会参加によるアクティブ・エイジングの実現(課題1)と、離農・耕作放棄地の増大とその対策(課題2)に対して、両者の「潜在能力」を生かした解決策を示すことである。この研究目的に対して、量的調査、質的調査双方を踏まえることから2つの目的を挙げた。第1に、アクティブ・エイジングの可能性という点から福祉社会学の発展、第2に、活動の場としての都市近郊農地の利用可能性という点から、都市、地域、農村社会学の発展を目指すとしたのである。 このような目的に対して、24年度の研究からは、「おおむね順調に進展している」と評価した。その理由は以下の2つである。第1に、「研究実績の概要」で示したように、既存研究のレヴューによる把握と、愛知県内でのフィールドワークに基づく調査研究をまとめることができたことである。 第2に、その成果から、すでに社会学的な知見をいくつか導き出しているためである。たとえば、上記の論文では、農地の所有と管理、事業収入の獲得、行政との関係、活動の組織作りなど、「農」の活動の存続条件と展開可能性を明らかにした。これまで都市部における「農」の活動が、社会学分野で注目されることは少なかったわけだが、これらの点に関する分析においてはその強みを生かすことができると考えられる。これは、件杞憂目的に記した福祉社会学の発展と都市、地域、農村社会学の発展の糸口となると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度以降のは、以下の4つの研究を実施する予定である。(1)東京、埼玉、愛知調査の比較分析、(2) 高齢者主体の都市農業集団の郵送調査実施、(3)関東、関西5団体でのインタビュー調査、(4)愛知県における都市農業先進地域の調査の継続。以上の4つのうち、(1)と(4)については、今年度下準備をしており、計画通りに実現することができる見込みである。 (2)と(3)については、この2つを統合した形での調査を実施したい。(2)の 高齢者主体の都市農業集団の郵送調査については、リストアップ作業は完了している。この調査については、計画していた郵送調査ではなく、研究協力者と協働で面接式の調査としたい。ここでは、予算の許す限りインタビューを行い、網羅的な情報収集を実現するために郵送調査を補足的に用いるという形にしたい。したがって、(3)の調査は、(2)の調査で十分実現するため、(2)と(3)の統合という形にしたわけである。 また、研究計画では、都市部における高齢者主体の「農」の活動が成功するモデルを提示したいとした。農業生産ではなく、交流事業、食育事業の展開により資金確保と活動の多様な展開への組織戦略を中心にすえた具体的な像を描き出すことが目的であり、実践的な志向を持っている。これは研究成果の内容にも左右されるが、関連学会での報告、投稿論文によつて、社会学的な視点からの精査を十分に行うと共に、実践者にもとどくよう、報告書、出版を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、以下の4つの研究を実施する。(1)東京、埼玉、愛知調査の比較分析、(2) 高齢者主体の都市農業集団の郵送調査実施、(3)関東、関西5団体でのインタビュー調査、(4)愛知県における都市農業先進地域の調査の継続。 研究費使用の中心は(2)と(3)となる。上述した通り、この2つは統合することにより、より効率的な旅費、郵送費の使用を行いたい。 また、調査データが蓄積されつつある段階であり、研究補助の利用も進めたい。
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