2012 Fiscal Year Research-status Report
原爆はどのように語られてきたのか-ロスアラモスで問う新たな歴史
Project/Area Number |
24653124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
桝本 智子 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (00337750)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ロスアラモス / 原爆 / 広島 / 科学者 / マンハッタン計画記念国立公園 |
Research Abstract |
初年度は予定通り、資料の収集とミュージアム関係者、ロスアラモス研究所へ連絡を取り、インタビューを実施した。ロスアラモス研究所の歴史家、政府運営のブラッドベリー・サイエンスミュージアムの館長にインタビューを行い、研究へのアドバイス、研究協力者の可能性など多岐に渡る情報を得ることができた。ロスアラモス研究所の、Alan Carr氏からは研究所が行った科学者へのインタビューを記録したサイトへのアクセス、その他必要な情報を研究所へ要望してもよいとの許可を得ることができた。また、科学者へのインタビューは原爆開発時に研究所に勤務し、現在生存する科学者へコンタクトをすることが難しいことから、研究所が収集したインタビューの分析する方法も示唆された。 現在研究所に勤務する2名の科学者にもインタビューをする機会を得ることができたが、今後はCarr氏のアドバイスに従いながら多少の修正をしていくことになる。 ブラッドベリー・サイエンスミュージアム館長のLinda Deck氏のインタビューからは研究所との結びつき、存在の意義、来場者の反応などの情報を得ることができた。そこからは、科学者の開発と政治を切り離した言説が伺えた。 ロスアラモス・ヒストリー・ソサエティーのミュージアムスペシャリストであるJudith Stauber氏とのインタビューからは、今後、ロスアラモスの住民への原爆・核兵器に関する歴史的見解を広げるような活動を目指していることがわかった。本研究への賛同も得ることができ、こちらからは原爆関係の映画の提示、広島平和記念資料館など関係者の情報などを提供した。今後、Stauber氏は有力な協力者となりうることが確認できた。また、ロスアラモス・ヒストリー・ソサエティーは2年後の発表の場として考えられる。今後の研究への協力者を得るという面では、ネットワークの基盤を構築することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報提供者となるロスアラモス研究所で原爆開発に携わった科学者の協力者リストを作成していくという初年度の目標は実現が難しいことがわかった。しかし、現在ロスアラモスに勤務する科学者や研究所関係者からの助言により、貴重なインタビューデータへのアクセスを許可してもらうことができた。このデータは十分に本研究の分析対象としては有効なものであることがわかった。また、ロスアラモスのマンハッタンプロジェクトの中心地となった建物を使用している博物館の協力を得られたことは非常に大きな収穫であった。今後、相互に協力をすることが可能であり、それによりロスアラモスで「広島の原爆」を展示するという本研究の最終目的を達成する可能性も大いに高まったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のロスアラモス研究所関係者へのインタビューから、研究所が所蔵しているインタビューの分析を行う。必要と思われるインタビューデータや資料を関係者へ提供してもらえるように要請していく予定である。同時に、広島平和記念資料館での資料収集、関係者に対して研究への協力を求めていく。広島平和記念資料館、及び、関連施設では館長など代表の交代もあり、今後、新たなネットワークの構築が必要となる。また、ロスアラモス・ヒストリーソサエティーとの協力体制を構築していくために、資料の提示や今後の活動の提案など情報提供をしていく予定である。 ロスアラモス・ヒストリソサエティーでは昨年度より、原爆に対する今までとは違った見方を試みる活動を取り入れているが、その進展状況はまだ始まったばかりといえる。科学者の成功の結晶としての原子爆弾という捉え方、戦争を勝利へと導いたマンハッタン計画の場所としてのロスアラモスという街、という概念は揺るがないものである。マンハッタン計画記念国立公園設立に向けての動きも関係者へインタビューを行い進展状況を見ていく予定である。昨年度は原爆関連の映画の情報をミュージアムに提供したが、今後もこのような情報提供を続けていき、何らかの形での発表の場に繋がるようにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料収集、ネットワーク構築、そしてインタビュー調査を実施するために広島、及び、ロスアラモスを訪問するための旅費として主に使用する。他はインタビュー調査に付随する備品、テープおこしの費用、資料購入費用に使用する予定である。
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