2013 Fiscal Year Annual Research Report
聞き取りによる被爆1世と2世の生活史研究:3.11原発問題下の子育て世代への示唆
Project/Area Number |
24653127
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
徳久 美生子 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (80625666)
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Keywords | ライフヒストリー研究 / 戦争・平和論 / 原爆の記憶とその伝承 |
Research Abstract |
今年度は、広島で6回のインタビュー調査を、福島で1回のフィールドワークを実施した。また調査の結果を、日本社会学会と現象学・社会科学会の大会で発表した。 調査の結果、「被爆1世」へのンタビューは、継続していくことが重要だと考えるようになった。インタビュー対象である原爆投下時に10代だった「被爆1世」たちは、80代を迎えて、自身の病気、配偶者の病気、死など、人生の大きな変化に直面していた。継続して会って頂いている間に、これらの変化を実感した。今後もインタビュー調査を継続し、このマイナスの変化と彼/彼女らはどのように向き合っていくのか、そしてどのように自身の死と対峙するのかを見届けたいと願っている。 「被爆1世」へのインタビュー調査から、被爆体験やその後の人生の捉え方、また被爆者対策についての考え方は、多様であるとわかった。したがって本研究のテーマである、次世代と、3.11以降の子育て世代に対する共感の回路も、多様である。だがひとつの物語ではなく、多様な語りのなかに、共感の回路は見いだせるのではないか、それをどう伝えていけるのか、鍵を握るのは、やはり第2世代である「被爆2世」たちなのではないかと思われる。ホロコースト第2世代であるエヴァ・ホフマンは、トラウマを抱えた第1世代とともに過ごした生活実感の上に、加害者側の第2世代との和解の可能性を考察している。今後、死と向き合う「被爆1世」たちを、「被爆2世」たちがどのように見守っていくのか、こちらもインタビューを継続していく所存である。 次世代への伝承という点では、大学生を対象にした研修プログラムを実施していきたいと考えている。一方的に話を聞くのではなく、一緒に時間を過ごし、「被爆1世」の人間性と触れる研修プログラムを考えている。幸い、広島に人脈も出来た。これも科研費による補助があったからだと、心から感謝している。
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