2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジア地政学と社会紛争:日本版トランスナショナルな社会運動研究に向けて
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24653130
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
成 元哲 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20319221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
申 キヨン お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (00514291)
樋口 直人 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (00314831)
松谷 満 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (30398028)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グローバル化 / 地政学 / 従軍慰安婦 / 冷戦 / 教科書問題 / 八重山 / 日韓関係 / 尖閣諸島 |
Research Abstract |
今年度行った具体的な作業は以下の(1)~(4)であり、その成果は(5)のようになる。 (1)理論研究:トランスナショナルな社会運動に関する理論的検討を加えた。それに加えて、ポストコロニアリズムの議論を日本の状況に適用する方向で読み解いた。特にE.サイードをもとに、「本国」と「植民地」で生じたできごとに緩やかな連関を読み取る対位法的分析の手法を、東アジアに適用するべく検討してきた。 (2)韓国調査:2012年9月に5人で「慰安婦」問題に関わる弁護士、市民団体、東アジア共通の歴史教科書に関わる研究者、日韓両国で市民運動を経験した活動家に対して聞き取りを実施した。 (3)沖縄調査:2012年11月、2013年3月に調査した。国境地帯をめぐる教科書問題、自衛隊誘致、外国人参政権問題が調査のテーマであり、八重山地区を中心に沖縄本島も含めて関係首長、議員、市民団体、労組などに聞き取りを実施した。これらの問題は、それぞれ別々に展開されてきたものの、「国境と防衛」をライトモチーフとする点で共通している。すなわち、沖縄戦の経験が独自の地域主義を生み出す沖縄本島とは異なり、八重山では「中国との国境」という論理が紛争の発生原因となる。 (4)国内での「慰安婦」関連調査:内閣外政審議室審議官、運動関係者に聞き取りをした。 (5)(1)と(2)の成果として、国境を超えた市民のコミュニケーションによるトランスナショナルな公共圏の形成と連帯の可能性について、「慰安婦」問題を事例として検討した報告を韓国政治学会で行い、韓国語論文を執筆した。 (2)(4)の成果として、運動に分断をもたらした「女性のためのアジア平和国民基金」の事業成立・実施過程を分析した論文を刊行した。(1)(3)の成果として、国境と排外主義の関連を扱った論考、及び日本の極右政治家に対する支持を東アジアという文脈から検討した論文を執筆、投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的検討の素材集めとして位置づけられた調査も無事に実施し、予備的ではあるがそれを理論的に展開した論考も執筆したから。
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄調査については、関係自治体の首長に対する聞き取りを中心に、早期のうちに調査を完了させ、まずは展開をまとめた論文を執筆する。韓国については、市民団体に対する聞き取り、「慰安婦」関連施設の訪問を継続する。それに加えて、日本側の政治家に対する聞き取りも実施する。これと並行して、理論的な展開に見とおしをつけて2014年度中に新たな論文を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
八重山調査の日程を確保するのが困難で、3人全員が参加することができなかったため、成の研究費に残額が発生した。これについては、今年度の成の配分を若干減らして調整し、全体を韓国、八重山調査のための旅費、打ち合わせのための旅費、文献購入に用いる。
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