2012 Fiscal Year Research-status Report
テーマ型コミュニティ創成による切れ目のない支援の実践と効果に関する研究
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24653137
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 篤 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20223133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 広路 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10283847)
津田 英二 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (30314454)
朴木 佳緒留 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60106010)
末本 誠 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80162840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | テーマ型コミュニティ |
Research Abstract |
福祉や教育等における支援を考える時、支援を受ける者のライフステージ(時間軸)や置かれている生活環境(空間軸)から生じるニーズを統合的に調整することが求められるが、ともすると個別ニーズの充足が第一義とされ、同じニーズを持つ者どうしの連帯による主体的な課題解決という視点が見失われがちになる。そこで「テーマ型コミュニティ」という形態の支援に着目し、主に大学が運営するサテライト施設(いわゆる育児支援や障害共生等を中核とするコミュニティセンター)において試行的に多様なセミナーやワークショップを実践することを通して、個別的ニーズの充足を超えた地域社会の課題への着目や解決に向かう市民性の育成の可能性を追求した。 具体的には、乳幼児を育てている親のキャリアを考えるセミナー、乳幼児を育てている親のファミリィーサポートセンター利用を考えるセミナー、障害をもつ子どもと親の居場所を提供するワークショップ、東日本大震災被災地を支援するための取組(石巻市仮設開成団地を応援するための当事者による講演会、大船渡市のまちづくりにかかわる学生ボランティアの福祉教育・ボランティア学習のためのワークショップ)なども内容を、研究代表者および研究分担者の専門である、子ども家庭福祉論、ジェンダー論、障害共生学、ボランティア学習論、労働学習支援論などの見地から構成し、平成24年度中に実施した。 セミナー等の実施後に参加者を対象に実施したアンケート調査からは、当該セミナー等の内容、すなわち参加による満足度・充足度は高いものの、今後同様のセミナーにどのような人たちと参加したいか、今後同様のセミナーの内容をどのような方向に広げたいかという質問に対しては、被災地支援への参加者を除き、きわめて消極的であった。言い換えれば、身近なテーマの場合、同じ様な状況にいる者どうしのコミュニティを好むという傾向にあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた「大学サテライトにおけるテーマ型コミュニティ」を利用した試行的支援を研究代表者及び研究分担者の専門領域に応じて実践することができた。当初に予測していたことだが、一見別の状況にありながら、実は同じ様なニーズに直面している者への気づきや協力して同じニーズを解決していくという姿勢は、単なる「テーマ型コミュニティ」の提供では醸成されないことも確認された。こうした点を醸成する方策を実践にもとづいて明らかにしていくのが次年度の課題である。しかし、東日本大震災に関連した「テーマ型コミュニティ」においては、自分たちのニーズと被災地のニーズとを統合的につないで課題解決につなごうとする姿勢と具体的なその後のアクションが確認できた。こうした点からおおむね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究によって、育児支援や障害共生支援など日常的なニーズを満たすための「テーマ型コミュニティ」と震災支援にかかわる「テーマ型コミュニティ」では、福祉的な視点の拡がりが異なることが明らかにされた。この違いが何によってもたらされているかを探求するとともに、複数の専門領域から個別に実践していた「テーマ」を融合するようなセミナー等を構想・実践することを通して、どのような働きかけや内容を備えた「テーマ型コミュニティ」を構築することが、個別的ニーズの充足を超えた地域社会の課題への着目や解決に向かう福祉的な市民性の育成につながるかを、平成25年度には明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大きくは2つの方向性に沿った使用計画を考えている。ひとつは、日常的なニーズを満たすために「テーマ型コミュニティ」を地域社会の解決への気づきや解決に向かうコミュニティに変容させるためのセミナー等の構築・実践にかかる支出である。もうひとつは、すでにその萌芽が見られた震災等に関連して形成された「テーマ型コミュニティ」がさらに発展していくための実践にかかる支出である。具体的には、前者については、主にセミナー等をファシリテートする講師への謝金とアンケート調査にかかる経費、後者については、主に被災地ないしは関連する地域での活動を支援する経費とその様子を観察し記録を分析する経費として研究費を使用する予定である。
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