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2012 Fiscal Year Research-status Report

元受刑者の社会的包摂と刑事施設における社会福祉士の役割に関する研究

Research Project

Project/Area Number 24653145
Research Category

Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research

Research InstitutionAsahikawa University

Principal Investigator

朴 姫淑  旭川大学, 保健福祉学部, 准教授 (10556070)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords受刑者 / 社会復帰 / 社会福祉士 / 社会的包摂 / 刑事施設 / 刑務所
Research Abstract

2012年度には、受刑者の属性が異なる刑務所における社会福祉士の仕事の現状と課題について調査を行った。主に、広島刑務所や松江刑務所、岡山刑務所、鳥取刑務所を訪問し、社会福祉士と分類統括職員に対するインタビューを行った。また、広島、島根、岡山、鳥取の地域生活定着支援センターを訪問し、元受刑者の社会復帰支援の状況を聞き取りした。さらに、保護観察所における社会復帰支援への取り組みについても調査を行った。その他、次年度の国際比較に向けて、韓国で文献調査を行った。
その結果、社会福祉士配置が刑務所にもたらしている共通の課題を把握することができたが、刑務所が収容している受刑者の特徴によって社会福祉士の仕事の内容の違いも明らかになった。とりわけ、矯正管区の基幹刑務所や比較的受刑者数が少ない刑務所、長期刑の受刑者が多い刑務所等、刑務所の特徴によって社会福祉士が置かれてる状況の差異が見られた。
さらに、刑務所と地域生活定着支援センターとは緊密な連携の下で受刑者の社会復帰を支援しているが、情報共有と守秘義務とのジレンマがあり、刑務所のルールや慣行と支援の在り方の間には互いに調整が必要な部分がかなりあることが明らかになった。
2012年度の調査を通して、社会福祉士の配置後の刑務所の現状において、これまでの北海道調査では見られなかった、中国地域の独自の試みがあり、政策の多様な運用が浮き彫りになった。今後、刑務所ごとの独自の動きを聞き取ること、全国調査を続けていく必要がある。また、社会福祉士の福祉的支援と刑務所の矯正という目的が融合する側面と、互いに葛藤する側面があり、それらを分析している。それによって、元受刑者の社会復帰支援における障害要因を明らかにすることができると思われる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究目的の一つとして、まず、刑務所における社会福祉士の役割と可能性については、2012年度まで10か所の刑務所の調査を通して、ある程度共通的課題が明らかになった。また、刑務所ごとの独自の取り組みを発掘することによって、今後の社会福祉士の役割の可能性についてもデーターを蓄積している。二つ目の研究目的である、元受刑者の社会復帰のための矯正・更生・保護・福祉の連携システムについては、各機関に対する調査をを続けているが、まだ包括的な仕組みとしての課題については明らかではない。今後補完していく必要がある。三つ目の研究目的である国際比較については、現在はイギリス・オランダ・韓国に対する文献調査を進めており、3年目の海外調査を通して明らかになると思われる。
当初の計画としては、初年度に全国の代表的刑務所を選びインタビュー調査を完了する予定であったが、調査時間を確保することに無理があり、北海道と中国地方に対する調査に留まった。個人的な事情として、2012年度に体調を崩し入院してしまい、回復まで時間がかかったため、調査を続けることが困難であった。
これまでの調査結果では、全国的共通性、また地域別・施設別の独自性、また、基幹刑務所と他の刑務所との違い、受刑者属性による刑務所間差異が等が明らかになったが、女性や外国人、医療刑務所等の特徴による差異を分析するには、調査が十分ではなかった。
そのほか、これまでの調査を通して、元受刑者に対する市民や企業の支援、また居住地における住民とのかかわりについてより注目する必要があることが新たに浮き彫りになった。元受刑者の社会復帰は、政策や制度、専門職の支援だけでは無理があり、住民の受け入れや地域社会への包摂が欠かせないため、今後はこうした視点に注目しながら研究を進めたい。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究課題の推進方策は、大きく三つである。第一に、全国の特徴的刑務所に対するインタビュー調査を続けることである。これまで刑務所の社会福祉士の役割や元受刑者の社会復帰に対する全国共通的な課題については、ある程度明らかにすることができた。だが、各地域や刑務所ごとの独自的取組については今後の調査を通してより豊かな事例を掘り下げる必要がある。それらを通して、今後の刑務所の社会福祉士の役割の可能性についてリアリティを持って言えることができると思われる。その際には、刑務所だけではなく、地域生活定着センター、更生保護施設などにも調査を広げていく必要がある。
第二に、今年度の後半には、全国の刑務所に対する量的調査を実施する予定である。社会福祉士が本格的に配置され始めた2009年度以後、全国の刑務所には続々社会福祉士が仕事を始めたが、それに対する統計的資料は存在しない。したがって、全国統計資料を確保することは、本研究だけではなく、政策の面でも今後刑務所における社会福祉士の役割と可能性を考える際に重要であると思われる。また、社会福祉士とともに刑務官に対するアンケートを並行することによって、受刑者の社会復帰に対する社会福祉士と刑務官との連携や考え方の相違を明らかにすることができると思われる。さらに、量的調査は、2012年までのインタビュー調査結果から明らかになった課題に対する根拠をより明確に提示するためには欠かせない作業である。
第三に、当初の研究計画では社会福祉士や刑務官、地域生活定着支援センターの支援員等、支援者中心の調査を考えたが、当事者である元受刑者に対する調査を試みたいと思っている。元受刑者に対するアクセスは必ずしも容易ではないが、支援者のみの調査では不十分な点が多く、元受刑者調査を盛り込む必要性があると判断している。
そのほか、国際比較のための調査設計及び準備をする。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

2013年度の研究費については、全国刑務所に対するインタビュー調査を続けるために使われると思われる。計画通り、女子刑務所、外国人が収容されている刑務所、医療刑務所、少年刑務所に対する調査をするためには、現地調査費用がかかると思われる。
また、今年度には全国刑務所に対する量的調査を実施するので、それに対する費用が生じる。量的調査のためには、書留の郵送調査が必要であり、回収率を高めるための電話での働きかけも必要だと思われるので、通信費などもかかると思われる。量的調査が終わった時点で、必要に応じてインタビュー調査で補完する必要があると予測している。
さらに、今年度は、国際比較の視点を確保するため、韓国の事例調査を一回計画している。これまでの文献調査を基にして、刑務所と民間の支援施設等に対するインタビュー調査を行いたいと思っている。
そのほか、これまでの研究成果をまとめ、今年度の後半には社会政策学会と日本社会学会で発表を予定しており、学会出席のための費用が生じると思う。
最後に、物品費としては、インタビュー調査結果をまとめるために、音声認識ソフトを購入したい。また海外文献の購入にかなりの支出が予想される。

  • Research Products

    (1 results)

All 2012

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 矯正施設における福祉的支援の可能性――刑務所で働く社会福祉士の経験から2012

    • Author(s)
      朴姫淑
    • Organizer
      日本福祉社会学会
    • Place of Presentation
      東北大学
    • Year and Date
      20120602-20120603

URL: 

Published: 2014-07-24  

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