2013 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルワーカーの実践的コンピテンスの構成要素と形成過程に関する基礎的研究
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24653152
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
丸山 裕子 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (00295156)
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Keywords | ソーシャルワーカーの技術 / 実践的コンピテンス / 力量形成過程 / 第2次分野 / 自己覚知 / 独立開業社会福祉士 |
Research Abstract |
研究2年めにあたる本年度は、前年度からの継続課題を含め、以下の2点を中心に取り組んだ。 (1)わが国における第2次分野としては比較的歴史のある精神医学ソーシャルワーカー(以下PSWと略)と医療ソーシャルワーカー(以下MSWと略)の方を中心に現場のソーシャルワーカーへの面接形式での聴き取り調査を継続して行った。研究代表者がこれまでの実践現場や実習教育・研究活動の中でかかわりをもち、「実践的力量が高い」「ソーシャルワークを体現できる」と主観的に感じた経験10年以上で現職のMSW・PSWの方たちに自らの力量形成に影響を与えていると考える事柄をエピソードなども含めて語ってもらう面接形式の聴き取り調査を行った。この部分の聴き取り調査は本研究の基盤となる部分であるにもかかわらず、前年度研究代表者と調査対象者とのスケジュール調整との関連で、予定の2/3程度の進行状態であったため研究を進展させるためにも今年度は優先して取り組んだ。 (2)上記、聴き取り調査と分析と平行して前年度より別府大学短期大学部伊藤佳代子准教授の協力を得て準備を進めていた独立開業社会福祉士への聴き取り調査を開始することができた。独立開業社会福祉士の方への調査については、他の機関・施設での経験を5年以上有し、トータル10年以上の経験を有する社会福祉士を対象とした。前年度の準備段階の打ち合わせでは、3件への聴き取りを予定していたが、結果として1件の調査しか実施できなかった。しかし、この過程で思いがけない出会いがあり、異なる視点から(1)に関連する聴き取り調査の機会が与えられるということもあり、本研究との関連では、ソーシャルワーカーとしてのネットワーキングの力量を実感する出来事ともなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述したように、研究初年度におけるPSW・MSWへの主観的語りを切り口とする面接調査(本研究の基盤)が予定より遅れていることの影響が大きい。この調査の分析・考察をもとに、独立開業社会福祉士への調査を進めつつ、PSW・MSWへの基礎研究との比較考察を行い、共通要素と形成過程(共通局面)に関する第1段階の仮説案を作成するというのが今年度の計画であった。さらに、エコシステム研究会のメンバーであり、PSWやMSWとしての実践経験のある教育・研究者からの専門的意見を得つつ、仮説案の精緻化と今後の研究課題の整理をはかるというのが、当初の予定であった。しかし、残念ながら基礎研究の分析・考察が十分練られていず、独立開業社会福祉士への調査も1件のみの実施であり、比較考察ができるまでデータが積みあがっていない。そのため、第1段階の仮説案作成までに至っていない、というのが実情である。 また、所属大学の改組案の動きとの関連で、教務委員としての業務や年度後半になってからの大学異動の件など、個人的な状況による研究環境の変化の影響も予定通り研究が進展していない一因といえる。 一方で、PSW・MSWへの聴き取り調査(基礎研究)が予定より遅れたことにより、思いがけない出会いもあり、当初予定した以上のデータを得ることができたことと実践的コンピテンスの構成要素に関する新たな本研究への示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にあたる26年度は、以下に取り組み、研究を深化させたい。 (1)24年度、25年度に行った本研究の基盤となる研究代表者が一人で行うPSWやMSWへの主観的語りを切り口とする面接調査のデータ分析と考察を深める。(2)上記研究と並行して、前年度予定していた3件のうち、1件しか行うことができなかった独立開業社会福祉士への聴き取り調査を継続して実施したい。この部分の調査に関しては、上述した別府大学短期大学部伊藤佳代子准教授へ引き続き協力を依頼する。(3)独立開業社会福祉士への聴き取り調査を優先して進め、PSWとMSWへの面接調査との比較考察を行い、共通要素と形成過程(共通局面)に関する第一段階の仮説案を作成したい。(4)エコシステム研究会のメンバーであり、PSWやMSWとしての実践経験を有する教育・研究者からの専門的意見を得つつ、さらなる仮説の精緻化と今後の研究課題の整理を試みたい。(5)仮説案の精緻化をはかりつつ、比較的新しい第2次分野で活動するスクールソーシャルワーカー、司法ソーシャルワーカー、産業ソーシャルワーカーなどへの聴き取り調査を行いたい。(6)仮説案と新しい第2次分野のソーシャルワーカーへの聴き取り調査の考察から、共通要素と形成過程(共通局面)に関する第2段階の仮説案を作成し、学会などで広く意見を求め、さらなる精緻化と研究の深化へと役立てたい。 ソーシャルワーカーの主観的語りを切り口とする面接形式での調査に基づく本研究の性格上、研究代表者と調査協力者の日程調整が前提となる。前述した研究代表者の研究環境の変化により、25年度の後半には、ほとんど調査を行うことができていない。研究が全体として半年強遅れの進行状態であり、今後予定どおり進めることが難しければ、研究期間の延長も考慮に入れる必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述してきたように、研究初年度の研究代表者との関係性が形成されているPSWやMSWの方への聴き取り調査が当初の予定どおり進めることができず、研究が全体的に半年強程度遅れていることよる。独立開業社会福祉士への聴き取り調査の旅費・謝金などが次年度使用額へと移行された。また、データ分析などに用いる予定のノートパソコンなどの購入も上記の聴き取り調査の遅れから急がなかったという理由もある。 また、研究代表者の研究環境の変化により、25年度後半、特に例年であれば比較的時間がとれる春休み期間をこの研究のために使うことができなかったことの影響も大きかったと考えている。 26年度には、全体として当初予定の半年強遅れの進行状況である研究の遅れをとりもどすべく、上述の研究計画に基づき、以下のような研究費の使用を予定している。聴き取り調査とその打ち合わせのための旅費と研究協力に対する謝金がその中心となる。 (1)独立開業社会福祉士への面接調査のための旅費と謝金(伊藤准教授分含む)(2)PSWやMSWとしての実践経験を有する教育研究者からの専門的意見聴取に伴う旅費や研究協力に対する謝金(3)スクールソーシャルワーカー、司法ソーシャルワーカー、産業ソーシャルワーカーなど比較的新しい第2次分野で活動するソーシャルワーカーへの聴き取り調査のための旅費や研究協力に対する謝金(4)調査の分析・考察のために用いるパソコンの購入(5)研究経過と成果を学会などで報告するための旅費 (6)報告書の印刷費
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Research Products
(1 results)