2012 Fiscal Year Research-status Report
医療との連携促進による在宅認知症高齢者への虐待対応に関する研究
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24653158
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Research Institution | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
Principal Investigator |
菊地 和則 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00271560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高齢者虐待 / 医療と介護の連携 |
Research Abstract |
在宅での高齢者虐待の原因の約4割は認知症の周辺症状による介護負担が関係していると指摘されている。そのため虐待対応は介護負担軽減を目的とした介護サービスの導入などが中心となっている。しかし近年の研究から周辺症状は投薬などの医療との連携が確保されれば改善可能であることが示されている。それにも関わらず、現場からは在宅認知症高齢者に対しては投薬・通院など医療との連携が確保されず、周辺症状の悪化により虐待につながる例が増加してきているとの指摘がある。本研究は、このような状況に鑑み、現に虐待を受けている在宅認知症高齢者への投薬・通院など医療の実態を明らかにすると共に、虐待対応における医療との連携のあり方を示し、もって虐待対応を促進し被虐待高齢者の権利擁護に資することを目的としている。 当初の研究計画では、平成24年度に在宅療養支援診療所、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、訪問介護事業所を対象とした郵送調査を実施する予定であった。しかし、申請時には未定であったが、平成24年6月に研究代表者は、東京都が東京都高齢者権利擁護推進事業で設置した高齢者虐待事例分析検討委員会の委員に就任する機会を得た。委員会では死亡事例を含む養護者による高齢者虐待事例について、支援に携わった区市町村職員、地域包括支援センター職員、医療機関、介護支援専門員、サービス担当者、民生委員などに直接聞き取り調査を行うものであった。 この調査の中で、当研究課題である医療機関との連携に、当初予想していたより大きな課題があることが明らかとなってきた。そのため、調査票を作成するにあたって、聞き取り調査の成果を反映した方がより良い研究を行えると判断した。よって、本年度は調査を行う予定を延期し、先行研究のレビュー、および調査票を作成するための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、平成24年度に在宅療養支援診療所、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、訪問介護事業所を対象とした郵送調査を実施する予定であった。しかし、申請時には未定であったが、平成24年6月に研究代表者は、東京都が東京都高齢者権利擁護推進事業で設置した高齢者虐待事例分析検討委員会の委員に就任する機会を得た。委員会では死亡事例を含む養護者による高齢者虐待事例について、支援に携わった区市町村職員、地域包括支援センター職員、医療機関、介護支援専門員、サービス担当者、民生委員などに直接聞き取り調査を行うものであった。 この調査の中で、当研究課題である医療機関との連携に、当初予想していたより大きな課題があることが明らかとなってきた。そのため、調査票を作成するにあたって、聞き取り調査の成果を反映した方がより良い研究を行えると判断した。そのため、予定していた調査の実施を平成25年度に延期することとした。しかし、虐待対応にあたった支援者に直接聞き取り調査を行ったことにより、現場で生じている虐待対応における医療との連携の困難さが明確となった。このことにより、調査票の作成および調査結果の分析をより良く行うことができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢者虐待防止法が施行されて7年が経過するが、未だに医療機関における高齢者虐待への理解が不十分である。その結果、虐待対応における医療機関の協力が得られなかったり、連携が円滑に行われないことがある。 平成24年度に実施予定であった調査は延期して、調査票作成の準備にあてることにした。平成25年度は、東京都内の在宅療養支援診療所、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、訪問介護事業所など約2,400ヶ所を対象とした郵送調査を実施する予定である。また、調査対象となった事業所の中からインタビュー調査への同意が得られた事業所10~20ヶ所についてはインタビュー調査を実施する。 そして現に虐待を受けている在宅認知症高齢者への医療の実態と虐待対応の内容を明らかにする。その中で、医療との連携が図られ周辺症状が緩和し虐待対応が促進された事例、および医療との連携が進まずに虐待対応が上手く行かなかった事例を比較検討し、医療との連携を促進し虐待対応を進めるための要件を明らかにする。また、高齢者虐待防止法や介護保険法など、医療との連携を促進して虐待対応を行う上での現行制度の在り方についても課題を明らかにする。 研究結果については報告書を作成し、調査対象となった全事業所、および東京都、都内市区町村などに送付して研究成果を還元する。報告書作成にあたっては、図表を多用するなど現場の専門職が利用しやすいように工夫する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、東京都内の在宅療養支援診療所、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、訪問介護事業所など約2,400ヶ所を対象とした郵送調査を実施する予定である。郵送調査を実施するために、調査票、調査協力依頼文、送付・返送用封筒などの印刷費用、調査票の送料・返送料、データ入力費用が必要となる。また、調査修了後は報告書印刷費用と送料も必要となる。 その他、研究会に高齢者虐待に造詣の深い専門職の参加を求めるための専門的知識の提供、研究補助、インタビュー調査協力者への謝品等も必要となる。 研究費は、これらの調査を行うために適切な額であると考える。
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