2013 Fiscal Year Annual Research Report
痛みと共感―“痛みの社会性”の認知・生理・神経的基盤に関する萌芽的検討
Project/Area Number |
24653160
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 達也 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20214554)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 晃 北海道大学, 文学研究科, 助教 (30312325)
松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720)
|
Keywords | 共感 / 情動伝染 / 認知的制御 / 痛み / 生理反応 / 指尖容積脈波 |
Research Abstract |
「他者の不遇や痛みをどのように共有できるか」という問いは、社会科学の根本的な問いであると共に、災害・格差を含む今日的問題の中核を形成する問いである。本研究は“痛みの社会性”を領域交叉的な形で検討するための有効な概念的フレームを構築することを目的とした。「情動としての痛みが本質的に社会的である」ということは、医療人類学、社会神経科学、社会・発達心理学を含む多様な領域において示唆されているが、これらの知見を統一する有効な研究パースペクティヴは未だ存在しない。本研究は、まず、多領域にまたがる経験的知見を整理し、“痛みの社会性”に関わる複数の鍵次元を概念的に析出した。その上で、このフレームがどの程度有効かを見極めるため、「他者の痛みに対する共感」を出発点に、行動・認知・生理を組み合わせた一連の予備的な実験を実行した。この結果、他者の苦痛に対して、その身体状況に応じた共感反応が生理レベルで起きることを一連の実験から明らかにした。こうした反応は、ボトムアップの情動共感的なプロセスと、トップダウンの認知的制御のプロセスが交絡して起こっている可能性が示唆される。
|