2013 Fiscal Year Research-status Report
プレザントネスを伴う環境色彩の心理・行動的影響の研究
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24653164
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 晋也 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70260586)
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Keywords | 色彩効用 / 環境色彩 / プレザントネス |
Research Abstract |
前年度に導入したLEDカラー照明装置(Panasonic製)を用い、stop signal課題およびクレペリン型連続加算課題による二つの実験を実施した。stop signal課題は単純な弁別反応課題に偶発性の反応抑制規則を組み合わせた課題で、課題遂行者の衝動抑制を検討することができる。実験では、反応抑制傾向に潜在的な影響を及ぼすと予測された赤色照明条件と青色照明条件を、統制条件としての白色照明条件と比較したが、課題成績の個人差が大きく、有意な条件差は検出できなかった。連続加算課題においては、赤色、青色、緑色の3種類の色照明を用い、これらを課題時間の1/3ずつのまとまりで与えるブロック条件と、1/9単位の高頻度で交代させるランダム条件を比較した。個人差を制御するため、課題を前後半に分け、白色照明下で行う前半の成績を基準として後半の色照明下での成績を検討したが、課題成績についても主観報告を求めたプレザントネス指標についても、明確な条件差は認められなかった。 また、前年度の主要な研究成果であった知的推論課題における赤色効果のデータを、英国で開催された国際色彩学会で発表した(演題:Red colour does not have a negative effect on intellectual performance of Japanese students)。この研究課題は、赤色提示条件を印刷色から照明色へと変えて継続実施しており、そこで得られた成果は、本年度の国際色彩学会で発表する予定にしている(開催地メキシコ)。さらに、これも前年度に引き続き、生活環境色の現地調査のための国内出張を行い、草加市民病院、横浜市営地下鉄などのカラーユニバーサルデザイン認証事例を中心に視察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LEDカラー照明装置を用いた実験を2シリーズ行ったが、いずれも十分な成果は得られなかった。とくに年度後半に実施した連続加算課題の実験では、装置の特性を活かして高頻度に照明色を交代させる条件(ランダム条件)を設定したが、課題成績のみならず、印象評価の主観指標にも影響を見出すことができなかった。この点は、照明色のランダムな変化がプレザントネスを喚起させるという当初の仮説を見直し、照明条件の設定を一層工夫するとともに、主観評価項目を改良することでさらに指標の感度を高めていく必要がある。この作業が、当初の研究計画よりも若干遅れている。 また、本研究課題の第二の柱となる定番色の調査研究については、生活環境で使用される色彩事例の収集のための現地調査はほぼ計画どおりに進んでいるが、人々の定番色イメージを明らかにするための質問紙調査の遂行が遅れている。調査計画はすでに出来上がっているので、平成26年度早々に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト最終年度となる平成26年度は、当初の計画どおり、①環境色彩が心理効果を発揮する際の視覚的プレザントネスの関与の検証、②現実の社会場面における効果的な色彩環境刷新事例の提案、を並行させて進める。①についてはLED照明装置を用いた実験室実験が主になるが、本年度、研究代表者の所属変更に伴い新たな実験室の整備が必要になるため、名古屋大学における旧施設を併用しつつ効率的に進める。また、②については、前年度の積み残しとなった質問紙調査を早々に実施した上で、その結果を参考に評価対象となる環境画像を作成する。年度後半には、得られた刺激画像を用い、色彩プレザントネスを軸にした大規模な評価実験を行い、最終目標である色彩環境刷新事例の具体的提案を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
もっとも大きい理由は人件費が発生しなかったことである。当初、実験研究、質問紙調査研究の双方で研究補助謝金の支出を予定していたが、実験については補助者を雇用することなく研究を遂行し、また質問紙調査研究についてはデータ入力補助謝金を見込んでいたが、結果的に年度内に研究遂行できなかった。 また、最終年度に当たる平成26年度に研究代表者が所属変更することが決まったので、LED照明装置の増設など、新たな実験環境構築に要する研究費の支出を抑制した。 まずLED照明装置の増設(照明器具1基の追加購入)を行う。加えて、当初計画にはなかったが、実験データの整理・解析用にノート型パソコンを1台購入する予定である。旅費については25万円を計上しているが、国際色彩学会参加によるメキシコ出張に加え、成果発表・現地調査のための国内出張が見込まれるため、当初計上額を上回る可能性が高い。さらに、効果的な人件費支出により研究補助者と協働し、複数の作業を同時進行させていく。
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Research Products
(8 results)