2015 Fiscal Year Annual Research Report
正しさゆえの愚かさと賢さに関する理論構築と実証研究
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24653165
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
神 信人 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (30296298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的ジレンマ / サンクショニングシステム / 怒り / チキンゲーム / 地位競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、短期的利益と長期的利益が葛藤する新たな社会状況についてコンピュータシミュレーションによる検討を実施した。当初想定していた状況は,短期利益と長期利益が葛藤する二つの相互依存構造、すなわち地位競争的チキンゲーム状況と相互協力的囚人のジレンマ状況が連結する社会構造であった。しかし研究進展に伴い、短期と長期の利益間の葛藤では、より相乗的な長期的利益を想定しなければならないことが明らかになった。これまで長期的利益として想定されていたのは、同一利得構造状況の反復において、ある時点の行動が対戦相手等の将来の行動を左右することであった。しかし、ある時点での行動は、対戦相手の行動だけでなく将来の利得構造までも影響を与えうる。例えば「弱い」と見なされれば不利な分配を押し付けられたり、「信頼できる」と見なされれば大きな財の交換が可能になったりする。そこで27年度は、多段階の利得構造が存在する状況での適応的行動についてシミュレーションを実施した。その結果、投入可能な財に限りがある場合、大きな財の交換を実現するために小さな財では協力する行動戦略が進化することが示された。 また、他者の不当行為を許せないという感情とそれにより引き出される行動が、集団利益を促進する過程について、大規模実験室実験(第6実験)により検討を行った。具体的には、非協力者への罰行使機会のある反復社会的ジレンマ状況を設定し、そこでの行動がその後のチキン的対人関係に与える影響を検討した。そこで明らかになったのは、罰行使者に対しては競争的な不平等分配を避ける傾向があるというものである。社会的ジレンマにおける罰の導入はそのコスト負担により二次的ジレンマ問題を引き起こすとされてきたが、こうしたチキン的状況での有利さが罰行使によるコストを上回ることで二次的ジレンマ問題が回避されている可能性が示された。
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Research Products
(1 results)