2013 Fiscal Year Research-status Report
ほめ・叱り行為の効果:行為者の動機づけに及ぼす影響
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24653185
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 あゆみ 同志社大学, 心理学部, 准教授 (00373085)
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Keywords | ほめ / 叱り / 動機づけ |
Research Abstract |
本研究の目的は,ほめ・叱り行為の行為者にとっての効果を検討することであり,これまでに,ほめ行為の行為者に与える影響についての予備実験が終了しているが,2013年度の研究実績は,第一に,予備実験の結果を5月にアメリカのワシントンDCにて開催された6th Annual Meeting of the Society for the Study of Motivationにて発表した(Tanaka, A., & Tsuyama, K. The effects of praise on the praiser’s intrinsic motivation)。ここでは,参加者にサクラとペアとなってある課題を行わせ,相手の課題の出来具合に対して,進歩や熟達をほめる群,社会的比較を用いて相対的にほめる群,単に結果を伝える群の3群にわけ,その後別の課題に対する動機づけや全般的な内発的動機づけに影響があるかどうかを調べた実験であり,Hernderlong, Ogle, & Geiger(2006)にもとづいた仮説と異なり,社会的比較を用いて相手をほめた群が,他の2つの群より,ほめた後に行った課題に対してより高いコンピテンスを報告するという効果が認められたことについて発表した。 第二に,2012年度に引き続き,ほめ・叱り行為および動機づけ行動全般の機能分析を行うための文献研究を行った。「動機づけ」についての定義を根本的に見直し,また,動機づけ研究の文脈において,ほめ・叱りにあたる報酬と罰という用語が適切に使用されていない問題について検討を行った。これらの文献研究の成果の一部は,2014年4月に出版された「心理学概論」(ナカニシヤ出版)の第6章「動機づけ」の中に反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度までに,ほめ・叱り行為の実体を把握するための調査およびそれをもとにした大学生とその保護者,また京田辺市の個別指導学習塾に協力を依頼しての講師に対する質問紙調査を予定していた。しかし2013年度は在外研究のためヨーロッパに滞在しており,これらの調査の実施が困難であったことから,2014年度に調査の実施を延期することにした。2014年度の前半に全ての調査を行う予定であり,計画の遅れを取り戻すことが可能であると判断したことから,評価を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は,第一に,ほめ・叱り行為の実体調査をまず大学生100名を対象として行い,両行為の対象者や対象場面,ほめ・叱り行為の内容,その状況における心理的反応について自由記述で報告を求める。第二に,実態調査をもとに,ほめ・叱り行動と行為者の動機づけとの関連を,大学生300名および学習塾の講師10名を対象として短期縦断的な調査を行う。本調査を効果的に行うために,実態調査が終了した後,国内のソーシャルモチベーション研究会において結果を報告し,アドバイスを得る。 2014年度はさらに,実験的手法を用いてほめ・叱り行為の効果についての因果関係の検討を行うことを計画していたが,2つの質問紙調査の結果の分析と考察に十分な時間を充てるために,実験の実施を2015年度前半に延期する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
差引額が生じたのは,2013年度在外研究のため質問紙調査が実施できなかったことによる。 「次年度使用額」は,2つの質問紙調査を実施するための消耗品費および謝礼として主に使用する。また,データ入力や分析の協力者への謝礼にも使用する予定である。
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