2012 Fiscal Year Research-status Report
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24653186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
石王 敦子 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (80242999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ストループ効果 / バイリンガル / 自伝的記憶 |
Research Abstract |
本研究では、日本語を使用しているバイリンガルの記憶表象モデルを構築することを最終目的としている。そのためには、これまで別々の文脈で行われてきた自伝的記憶のように長期記憶に関わる実験と、ストループや翻訳課題のように作動記憶や注意が関わる実験とを同時に行うことで、それぞれの実験で出ていた結果を統合することができ、それによって日本語を使用しているバイリンガルの総合的なモデルの構築ができると考えている。 まずは、日本語-英語バイリンガル者を対象として、彼らの自伝的記憶や知識がそれらを経験したときに使用していた言語に依存して貯蔵されているかどうかを検討することにした。先行研究であるロシア語-英語バイリンガルを用いた研究を参考に、日本語―英語のバイリンガルを対象に、二言語の手がかり単語を用いて、その単語から再生される自伝的記憶がどのようなものかを検討することにした。 本年度は、自伝的記憶の研究方法についての資料収集を行い、妥当な研究方法や手がかり単語の精査を行った。さらに、実験参加者として、カナダに住む日本人の方達に参加をお願いすることにし、その方達の言語使用についてインタビューを行った。カナダでのインタビューでは、以下のことがわかった。カナダに移住した初代の人達は、英語が主の人と日本語が主の人に分かれる。その子ども達の世代は第一言語が英語になり、日本語は使用するものの家族や限られたコミュニティでの使用となる。先行研究では、二言語についてほぼ同等の言語能力を持っている参加者が対象であったので、同様の実験を行うことはできないことになるが、手がかり語の再検討などの修正を加えて、二言語の言語能力が不均衡なバイリンガルを対象とした実験も行い、それを含めたモデルの構築を考えることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、自伝的記憶の研究方法についての資料収集を行い、妥当な研究方法や手がかり単語の精査を行った。さらに、実験参加者として、カナダに住む日本人の方達に参加をお願いすることにし、その方達の言語使用についてインタビューを行った。カナダでのインタビューでは、以下のことがわかった。カナダに移住した初代の人達は、英語が主の人と日本語が主の人に分かれる。日本語を主として使用してきた人たちは、居住年数の長短に関わらず英語を使う頻度が少ない。その子ども達の世代は第一言語が英語になり、日本語は使用するものの家族や限られたコミュニティでの使用となる。先行研究では、二言語についてほぼ同等の言語能力を持っている参加者が対象であったので、同様の実験を行うことはできないことになるが、手がかり語の再検討などの修正を加えて、不均衡なバイリンガルを対象とした実験も行うことにした。 二言語の能力が均衡なバイリンガルは、なかなか日本人では見つけにくいので、海外での居住者を対象に考えたのだが、その程度に差はあるものの海外在住者でも不均衡なバイリンガルが多いことがわかった。そこで、不均衡なバイリンガルをも含められるようにモデルの修正をおこなうことの可能性を探ることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に引き続き、日本語-英語バイリンガルの自伝的記憶や知識がどのように貯蔵されているか、また素早い反応を必要とされる課題では、どのように二言語が活性化されるかについて検討する。カナダでの日本人実験参加者については、二言語の能力が不均衡なバイリンガルの人も多いので、均衡バイリンガルだけではなく不均衡なバイリンガルも含めたモデル修正の可能性を探ることにする。また、カナダでの実験参加者が思うように獲得できなかった場合は、日本で生活している外国人を対象に、実験参加者を募ることも考えて、データの確保に努める。最終的には、日本語-英語バイリンガルの記憶表象モデルを構築することが目的なので、日本語と英語バイリンガルの実験参加者を求めて検討していく。 前年度に引き続き、調査と実験を行ない、中間の成果をまとめて発表し、他の研究者から意見を聞く機会をもつ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、実験データの収集をするための旅費、実験実施にあたっての実験補助、データ整理等の研究補助、専門的知識の提供等、消耗品や通信費、資料収集のための国内外の旅費等に経費を使用し、さらに研究を進めていく予定である。
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