2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24653186
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
石王 敦子 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (80242999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイリンガル / 自伝的記憶 / ストループ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語を使用しているバイリンガルの記憶表象モデルを構築することを最終目的としている。そのために、これまで別々の文脈で行われてきた自伝的記憶のように長期記憶に関わる実験と、ストループや翻訳課題のように作動記憶や注意が関わる実験とを同時に行うことを試みた。しかし、これまでバイリンガルの自伝的記憶や知識に関してはあまり研究がないため、まずは日本語-英語バイリンガル者を対象として、彼らの自伝的記憶や知識が、それらを経験したときに使用していた言語に依存して貯蔵されているかどうかを検討した。先行研究であるロシア語-英語バイリンガルを用いた研究を参考に、二言語の手がかり単語を用いて、その単語から再生される自伝的記憶がどのようなものかを検討した。対象者は英語圏に在住する日本人バイリンガルであった。英語と日本語で意味が対応する単語をそれぞれ提示して、思い浮かぶ記憶を挙げてもらい、その記憶が日本語による記憶か英語による記憶かとどちらの国での記憶かを判断してもらった。個人の言語的背景として、渡航時の年齢、滞在年数、自己評価による英語の聞く・話す・読む・書く能力などを聞いた。その結果、滞在年数に関わらず英語の単語は英語による記憶を思い出させ、出来事が起こった国も現在住んでいる国であることが多かった。しかし日本語単語が手がかりになると、日本語の記憶であっても起こった国は必ずしも日本ではなかったり、両方で起こった出来事であったりした。自伝的記憶の検討方法は、現在の時点から過去を振り返るという手法であるため、現在どの国に居住しているのかが思い出す記憶に影響する可能性が考えられた。瞬時に判断を迫られるような課題からの予測では、熟達したバイリンガルは、それぞれの言語で経験した記憶が比較的独立して貯蔵されていると考えられたが、独立している部分と融合している部分のある可能性が伺えた。
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