2013 Fiscal Year Research-status Report
長期閉鎖環境への適応および帰還後再適応に対する心理的サポート方法の開発
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24653202
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
鳴岩 伸生 京都光華女子大学, 人文学部, 准教授 (20388218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 知子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20205272)
川部 哲也 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (70437177)
佐々木 玲仁 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70411121)
加藤 奈奈子 京都文教大学, 臨床心理学部, 講師 (40583117)
佐々木 麻子 立命館大学, 学生サポートルーム, 契約専門職員 (80649517)
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Keywords | ストレス / 南極地域観測隊 / 長期閉鎖環境 / 越冬隊 / 臨床心理学 / 極地 / 南極 / 再適応 |
Research Abstract |
本研究は,南極越冬中の隊員におけるストレスの詳細とその対処を調査することにより,(1)閉鎖環境での長期生活によって生じる心理的課題を明らかにし,(2)遠隔地への心理的支援の可能性を検討すること,さらに,(3)越冬隊員への帰国後の再適応のための心理的サポート体制を構築し,遠隔地での長期生活から日本に再適応する際の心理的負荷とその支援策を見出すことを目的とする。平成25年度の研究成果は,以下の3点である。 1.【第53次南極地域観測隊越冬隊員に対する心理調査の分析】越冬隊員31名に継続的に施行した心理調査の分析を行った。調査時期は,2011年11月(出発前の日本),2012年3月(越冬初期),同年6月(極夜前後),同年7月(冬季),同年9月(春季),同年12月(白夜期),2013年3月(帰りの船内)の合計7回であった。調査用具は,(1)気分の状態を調べるPOMS,(2)達成動機尺度,(3)パーソナリティ特徴を測定するBig Five尺度であった。(1)POMSの結果から,53次隊においては,出発前(11月)の「緊張‐不安」および「混乱」が高かった。50次,51次隊に見られた「白夜期に否定的な気分が上昇する」という結果とは異なり,統計的に有意な時期変化が見られなかった。(2)達成動機尺度からは,過去の隊同様,越冬中は隊員の自己充実的な達成動機が高い水準で一定に保たれていたことが明らかになった。 2.【第53次越冬隊員に対する面接調査】個々の隊員の越冬中および帰国後のストレス状況の詳細を把握するため,研究協力を承諾した第52次越冬隊員15名に対し,2013年12月~2014年3月に半構造化面接による調査を施行した。現在,分析中である。 3.【第55次越冬隊員に対する共同研究】第55次越冬隊員を対象とした国立極地研究所の医学研究のうち,POMSの分析と帰国後の面接調査の分担が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,南極越冬中の隊員におけるストレスの詳細とその対処を調査することにより,(1)閉鎖環境での長期生活によって生じる心理的課題を明らかにし,(2)遠隔地への心理的支援の可能性を検討することを目的とする。さらに,(3)越冬隊員への帰国後の再適応のための心理的サポート体制を構築し,遠隔地での長期生活から日本に再適応する際の心理的負荷とその支援策を見出すことを目的とする。 平成25年度の実施計画として挙げていた,(1)第54次南極地域観測隊越冬隊員への心理調査の施行,(3)帰国した第53次南極地域観測隊越冬隊員への面接調査は,無事に実施することができたこと,南極医学医療研究成果の公表については、予定どおり,2013年7月に国立極地研究所で行われた南極医学医療ワークショップにて口頭発表を行ったことから,「おおむね順調に進展している」と評価した。ただし,(2)越冬隊経験者への面接調査については,まだデータ収集が十分とは言えず,引き続き26年度の面接調査に力を注ぐことが重要だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,当初の計画通り,(1)第54次南極地域観測隊越冬隊員への質問紙調査の統計的分析,(2)帰国した第54 次南極地域観測隊越冬隊員への面接調査,(3)成果の公表を行う。ただし,以下の2点について計画を一部変更する。1点目は,前年度に引き続き,越冬隊経験者への面接調査を施行する。2点目は,成果の公表について,当初計画では,4学会での発表を考えていたが,一部日程の重複もあり,国立極地研究所主催の南極医学医療ワークショップにおける発表1つと,2014年8月にニュージーランドのオークランドで開催される南極科学委員会SCAR(Scientific Committee on Antarctic Research)主催の学術集会で2つの発表を行った後,学術論文として公表する。 (1)における質問紙調査の分析については,大阪府立大学の川部哲也が主に分担する。(2)における越冬隊医療隊員との連携に関しては,京都光華女子大学の鳴岩伸生が主に分担し,面接調査の施行と分析は,九州大学の佐々木玲仁,京都文教大学の加藤奈奈子,立命館大学の佐々木麻子が主に分担する。また,越冬隊経験者への面接調査の施行と分析は,京都大学の桑原知子と京都光華女子大学の鳴岩伸生が主に分担する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は,760,084円が未使用となった。主な理由は,第53次南極観測隊越冬隊員への面接調査にかかる調査者および調査協力者の旅費を,国立極地研究所に負担していただいたことによるものである。 平成26年度に関しては,海外での成果発表および国内での成果発表にかかる旅費・参加費,第54次隊のデータ分析にかかる謝金,第54次隊の面接調査にかかる旅費・通信費とデータ整理にかかる謝金に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)