2012 Fiscal Year Research-status Report
日本人女性心理学者と欧米の心理学者の交流史に関する質的研究
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24653215
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
高橋 雅延 聖心女子大学, 文学部, 教授 (10206849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 心理学史 / エスノセントリズム / ジェンダー / 非構造化インタビュー |
Research Abstract |
本研究の目的は、従来の心理学史に内在する(1)欧米人の観点を中心としたエスノセントリズムと、(2)男性中心のジェンダーバイアスという2つの問題点を克服し、新たな視点からの心理学史の可能性を模索することであった。そこで、対象者を日本の女性心理学者に限定した上で、彼女たちと欧米の心理学者との交流の歴史をインタビュー調査によって検討した。その際、本研究の特色としては、異なる年代の日本人女性心理学者にインタビュー調査を行い、それを単なるエピソードとして収集するのではなく、質的研究の一つであるライフヒストリー研究の枠組みの中で分析を行う点にあった。24年度は、一線を引退した高齢(満75歳以上)の日本人女性心理学者9名を対象とし、連絡が取れ承諾していただいた6名を対象にインタビュー調査を行った。また、当初予定していた25年度の対象予定者である、現役で活躍している中高年の日本人女性心理学者23名のうち、5名にもインタビュー調査を行った。いずれも研究代表者自身がインタビュアーとして90分程度の非構造化インタビューを行い、許可を得た上で録音を行った。こうして、これらのインタビュー記録をもとに、そこに見られる共通性と差異性を明確にすることによって、日本人女性心理学者と欧米の心理学者との交流史を明らかにすることに着手し始めた。これらのことによって、エスノセントリズムとジェンダーバイアスから脱却した新たな心理学史を構築できる可能性を提言しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、すでに一線を引退した高齢(満75歳以上)の日本人女性心理学者の中で、過去に顕著な活躍をした日本心理学会の終身会員の女性9名を対象にインタビュー調査を行う計画であった。『日本心理学会会員名簿2010年版』に掲載されている終身会員とは、「満75歳以上、かつ正会員在籍年数40年以上の者で、本人の申し出により理事会の承認を得た個人」とされている。これらの対象者に連絡をしたところ、病気や連絡先不明などの理由で協力いただけなかった3名以外の6名の対象者に当初の予定通りインタビュー調査を行うことができた。インタビュー調査の準備、実際のインタビュー調査、データ分析は研究代表者自身が行うことも計画通りに完遂できた。また、心理学史やインタビュー研究といった関連論文の整理などを行うための研究協力者も、当初予定していた大学院生の都合がつかなくなったので、学部3年次生5名で代替することができた。さらにまた、高齢者を対象にするという特殊性から、高齢者の心理学に関連のある学会に参加し資料収集を行うだけではなく、的確な専門的助言者にも有益な示唆を受けることができ、研究に厚みを持たせることができている。これらのことに加えて、当初、平成25年度のインタビュー対象者である、現役で活躍している中高年の日本人女性心理学者の中で、日本心理学会の専門別代議員の女性23名のうち、前倒しで5名のインタビュー調査を終えることができた。ただし、研究代表者の所属大学の研究紀要(『聖心女子大学論叢』、年2回発行)に日本語で執筆する予定に関しては遂行できていない。以上のことから、研究申請書と照らし合わせてみて、85%程度の成果が達成されていると結論づけられよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も引き続き、年代の異なる女性研究者のインタビュー調査を実施していく。すなわち、平成25年度のインタビュー対象者は、現役で活躍している中高年の日本人女性心理学者の中で、日本心理学会の専門別代議員の女性18名(すでに5名のインタビューが終了のため)を予定している。『日本心理学会会員名簿2010年版』に掲載されている専門別代議員とは、選挙により選ばれ「正会員を代表して総会に出席し、審議事項を議決する」とされている。これらの対象者18名と連絡を取り、平成24年度と同様に、インタビュー調査の準備、実際のインタビュー調査、データ分析は研究代表者自身が行う予定である。また、これも平成24年度と同様に、心理学史やインタビュー研究といった関連論文の整理などを行うための研究協力者として、当初予定していた大学院生に依頼する予定である。なお、とりわけ平成25年度は、平成24年度において研究成果の発信が出来ていなかったので、代表者の所属大学の研究紀要(『聖心女子大学論叢』、年2回発行)に日本語で執筆することに重点を置く予定である。その際、関連の学会に参加して資料収集を行うと同時に、適切な専門的助言者より助言を受けるように配慮する。あわせて、ホームページによる国民への発信や心理学史の授業での研究成果の紹介も試みていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の旅費を当初予定よりも抑えることができたため、若干の次年度使用額が生じた。これらを受けて、本研究課題では国内旅費(インタビューや学会の資料収集)と謝金(インタビュー参加者、資料整理の研究協力者、専門的知識の提供者)を主な研究支出項目とした。 まず、国内旅費として、インタビュー調査では、首都圏及び近郊在住の者(13名)の交通費は一律往復2,000円とし、それ以外の者(5名)は宿泊を伴わない新幹線往復交通費を使用する予定である。また、資料収集のメインとなる日本科学史学会への旅費は、開催校が日本大学のため、往復2,000円の交通費と日当を使用する予定である。さらに、日本質的心理学会は立命館大学で開催されるので、新幹線往復運賃、(前述の規定による)宿泊費と日当を使用する予定である。 謝金としては、インタビュー参加者謝礼1人あたり10,000円は、代表者の所属大学の規定(教授、准教授ともに千円未満を切り捨てて時給5,000円)をもとに最大2時間を想定して使用する予定である。資料整理のための研究協力者(2名)の1人あたりの謝金120,000円は、科研費の標準的な時給1,000円×4時間(1日あたり)×10日間(1ヶ月あたり)×3ヶ月で算出したものを使用する予定である。さらにまた、専門的知識の提供は、それぞれ1回3時間とし、25年度は3名を予定している。
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