2012 Fiscal Year Research-status Report
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24653216
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
金沢 創 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (80337691)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 乳児 / 感覚間統合 / 食物 |
Research Abstract |
昨年度は、4つの学会発表と1つの学術論文の出版を行った。学術論文では、トマトとイチゴの匂いがトマトとイチゴの視覚映像と結びついて学習されているか否かを、乳児を対称に検討した。具体的には選好注視法を用いて、モニター上にイチゴとトマトの映像を呈示し、両者に対する注視時間を測定することで実験を行った。視覚刺激呈示時に、イチゴまたはトマトの匂いをアロマデヒューザーで拡散させ、匂いの有無によって選好注視に変化がみられるかどうかを検討した。その結果、イチゴとイチゴの匂いは、日常生活での接触の結果として連合していることが示唆された。 また、本研究計画の一環として実施された乳児における視嗅覚連合の実験では、スターアニスと腕輪型のぬいぐるみ玩具を用いることで、恣意的な嗅覚刺激の連合形成について検討した。具体的には、(スターアニス)を設置したおもちゃを用意し、これを乳児に与えることで一定期間特定の嗅覚刺激と玩具との連合を形成する。そののち、嗅覚刺激と連合した玩具と連合していない玩具を、乳児の眼前のモニターに画像として対呈示し、その選好注視を検討した。この選好注視を測定する際、実験では、実際に連合形成場面で用いた匂いをアロマデヒューザーを用いて拡散する「匂いあり条件」と匂いの拡散を行わない「匂いなし条件」を用意し、両条件間の選好注視を比較した。その結果、条件間で有意な差が見られた。本研究の結果は、情報の符号化時と想起時に同じ文脈刺激が呈示されることにより、想起成績が促進されるという文脈依存記憶が、乳児においても存在することを示唆しているものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる感覚間の交互作用の研究は主に視聴覚の間で検討されてきたが、発達初期から機能し食物ともかかわりがあり、生態学的に重要な感覚である嗅覚を扱うことは検討されていない。本研究全体では、高砂香料と食品総合研究所の協力の下、乳児の視覚と嗅覚の連合学習について検討することが目的である。一般に、食物のにおいは文化圏ごとに顕著な特徴があり、子どもの頃からの学習により成立すると考えられる。全体的な研究計画の実施のため、この学習がいつごろにどのような発達メカニズムのもとで獲得されるのかを検討する。具体的には、嗅覚刺激を玩具に入れて学習させ、その後の視覚選好に嗅覚が及ぼす影響を調べる実験を行う。嗅覚は日本でなじみの少ない香辛料のスターアニスを用い、嗅覚(玩具のにおい)と視覚(玩具の外形)の学習過程を検討する。現状では、この実験をまず実施し、一定の結果を予備的に得ている段階である。今後はこの過程の妥当性をよりコントロールされた条件で検討していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後必要なことは、現段階で予備的に得られた視嗅覚統合の実験結果の、妥当性と信頼性を確保するべく、さまざまなコントロール実験を実施していくことにある。昨年度までは、乳児にとってなじみのないスターアニスの匂いを使用して、視覚と嗅覚の連合について検討してきた。しかしながらこの方法では、学習段階を実験的に設定するため、学習自体が十分に進まないという問題がある。具体的には、1日数十分程度の14日間のアニスとオモチャの学習では、不十分である可能性が考えられるのである。そこで今後は、乳児にとって最もなじみのあるミルク(食物)と洗剤(非食物)の匂いを使用し、匂いつき玩具への選好について検討することで、学習のアリ/ナシを、より深く検討していきたいと考える。例えば、なじみのある食べ物の匂いは、その匂いのついたおもちゃへの探索行動をより促進することなどが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も引き続き、赤ちゃんを被験者として実験を継続していくための費用に、主に研究費を使用していく。具体的には、赤ちゃん研究員を新聞広告にて募集するためのチラシ代、新聞集配所に払うチラシ配布代、などにまずはあてられる。さらに実際に実験に来てただいた際に被験者の方お支払する図書券での謝礼も、研究費使用の大きな品目となる。現状での赤ちゃん実験ラボでは、年間のべ800人程度の2-8ヶ月の乳児にきていただいており、このシステムを用いてその被験者の一部を本研究計画にあてることとなる。また、本研究計画には、様々な嗅覚刺激を用いるため香料が必要となる。この香料を、香料会社である高砂香料から引き続き提供していただく予定である。この香料作成のための費用も、研究費によって支払っていく予定である。さらに本年度も実験で得られた結果を、国内・国外の学会および研究会で発表し、広く学会でのディスカッションを通じて本研究計画を洗練させていき、研究全体の目的を具体的な実験へとつなげていきたいと計画している。
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[Journal Article] Infant visual preference for fruit enhanced by congruent in-season odor2012
Author(s)
Wada, Y., Inada, Y., Yang, J., Kunieda, S., Masuda, T., Kimura, A., Kanazawa, S., & Yamaguchi, M.K.
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Journal Title
Appetite
Volume: 58(3)
Pages: 1070-1075
Peer Reviewed
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