2013 Fiscal Year Research-status Report
スペイン高等教育における教養教育の「二重の質保証」システムに関する研究
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24653222
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北原 良夫 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (20250805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 歳之 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (60436178)
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Keywords | 学校教育 / 二重の質保証システム / 教養教育 / 国際研究者交流(スペイン) |
Research Abstract |
本研究は、スペインの(高等)教育制度やその発展過程の把握、及び、現在進行中の教育制度改革の内容とその影響などについての把握や検討を通して、スペイン高等教育の教養教育における「二重の質保証」を可能にしているシステムの実態などを明らかにすることを目的としたものである。スペインの高等教育制度やその運用実態に関する先行研究の蓄積はきわめて乏しい状況にあり、本研究におけるスペインの高等教育制度の発展及び改革に関する検討を通して、我が国の高等教育の発展にも重要な示唆を与えようとするものである。 研究初年度にあたる昨年度は、提出済みの「研究実施状況報告書」において報告したとおり、基金化されていることを最大限に活用して補助金の運用に効率性及び柔軟性をもたせるという運用上の理由、及び、東日本大震災からの復旧に伴う物理的な理由から当初の計画を変更し、研究二年度目の今年度と最終年度の来年度において集中的に研究を遂行することとした。まず本年度においては、昨年度に引き続き、本研究の展開に必須の情報となる、スペインの(高等)教育制度の歴史的展開、現在進行中の教育面での欧州連合間相互認証を目指す教育制度改革の内容について把握することを主たる目的として、既存の文献や資料等によるさらなる情報収集を行い、基本的かつ重要な情報についての整理を進展させた。変更した計画では、スペインの教育行政機関及び高等教育機関での聴き取り調査及び資料収集などを行う予定でもあった。しかし、下記「現在までの達成度」の項目で具体的に述べる事由などにより、訪問調査については来年度に延期して集中的に行わざるをえなくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、現地に赴いての聴き取り調査及び資料収集等が中心的な研究手法となるが、上述の通り、現時点では訪問調査は実施されておらず、そのため達成度の自己評価区分を(4)とした。その理由及び関連して本年度直接経費の支出がほとんどない理由は下記の通りである。 昨年度の「研究実施状況報告書」提出時点で修正した計画では、今年度と来年度の2年度に渡り、調査地域を適宜区分して効率よく訪問調査を行う予定であった。そのため、本年度当初は、昨年度に引き続き、訪問前の準備として、スペインの(高等)教育の制度や現状など、本研究の遂行に必須となる基本的かつ重要な情報のさらなる収集や整理などに努める一方で、訪問先の絞り込みなどを行った。その結果をもとに、まずは夏季(8~9月)の訪問調査に向け、訪問先の候補に接触を始めたが、その後生じた主に2つの事由により調査の延期を余儀なくされた。1つは、東日本大震災に関連するもので、震災前に居室のあった建物の災害復旧と耐震工事等が完了し、9月前半に一斉にもとの建物に戻ることになったため、その前後の準備や片付け等に必要な期間も含めて拘束されたことである。もう1つは、校務に関するもので、詳述はできないが、研究代表者が予期せず入試業務に関わらざるをえなくなり、夏季(特に8月)及び春季(2~3月)における拘束が多くなったことである。1~2週間程度の訪問調査を行う上で業務上比較的計画が立てやすいのは夏季(8~9月)または春季(2~3月)の休業期間中であるが、主に以上のような事由により、これらの時期に訪問調査を行うのが難しくなってしまった。 中心的な研究手法が訪問調査であることから、助成金の相当部分が旅費(航空運賃、滞在費、国内及び現地交通費等)に充てられることになっており、結果として、今年度の直接経費の支出は情報収集に要した少額に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度及び二年度目の遅れを速やかに取り戻し、一定の成果をあげるため、最終年度となる来年度(平成26年度)の1年度の間に、当初の3年度分の計画を圧縮した形で精力的に実施することになる。特に、来年度は、現在の所属先がより大きな組織に改組される予定であり、予期せぬ業務が増える可能性もあるので、年度の後半に圧迫が生じないよう、年度の前半にとりわけ精力的に研究計画を実施してゆくつもりである。 具体的には、昨年度及び今年度に行う予定であった、①スペイン高等教育(制度)の発展過程及び近年の動向とその影響の把握、②第一課程で共通の学位を授与することが可能となっている背景と問題点、及び、③第一課程の教育内容の特徴、3点について、文献や資料を通しての調査や訪問調査(スペイン本国の教育行政機関や高等教育機関など)により研究を進める予定である。上述したとおり、前者についてはかなりの程度まで進んでいるが、後者については来年度スピード感をもって遂行する必要がある。現在のところ、まずは9月の前半を候補時期として、10日~2週間程度の訪問調査を(場合によってはより短期間の調査を2回)予定しており、来年度早々から訪問候補先との交渉などを改めて行ってゆく予定である。候補としては、国立大学が多数を占めるスペインにおいて高等教育行政の担い手となっているスペイン教育科学省に加え、スペインでもっとも古い歴史をもつサラマンカ大学やマドリッドとその近郊に所在する複数種類の高等教育機関を主な訪問先として計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中心的な研究手法が訪問調査であることから、助成金の相当部分が旅費、特にスペイン本国の教育行政機関や高等教育機関などへの訪問調査に要する旅費(航空運賃、滞在費、国内及び現地交通費など)に充てられることになっている。実際、応募時の計画でも旅費が総額の8割以上を占めていた。しかし、「研究実績の概要」や「現在までの達成度」の項目で述べたように、余儀ない理由により、現時点では訪問調査が実施されておらず、そのため、相当額の未使用額が生ずることとなった。 上記の調査のため、平成24年度~平成26年度の3年度に渡る交付予定額(直接経費:220万円)のうち、今年度資料収集のため支出済みの経費数万円を差し引いた残りの経費すべてを使用する予定である。また、その大部分が、訪問調査のための旅費や滞在費等、及び、録音機材購入や通信費等の訪問調査関連経費に充てられる予定である。
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