2013 Fiscal Year Research-status Report
社会人大学院生の学習特性・環境に適した教授法と研究指導方法の開発
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24653226
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近田 政博 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (80281062)
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Keywords | 社会人学生 / 教授法 / 研究指導方法 / 大学教育 |
Research Abstract |
本研究は社会人大学院生の学習特性・環境に適した教授法と研究指導方法の開発を行うことを目的とする。成人教育の理論枠組み(マルカム・ノールズの「アンドラゴジー」概念)を大学院教育に援用することにより、学習者の自発性や自律性を尊重する方法、学習者の職業・生活経験を学習資源として活用する方法などを明らかにする。これにより、大学院での研究指導の経験が少ない大学教員に対して、社会人大学院生と良好な関係を築き、学位論文の作成を促進するための方法論を明示化・共有化したい。 アンドラゴジーモデルによれば、人間は成熟するにしたがって、学習者の自己概念は依存的なパーソナリティから自己決定的なものへ変化し、発達や成長に伴って蓄積した経験が学習する上での貴重な資源となる。こうした成人学習者の特性を活かした教授法の開発は、社会人学生が大きなウエイトを占める日本の大学院教育にとって喫緊の課題である。 他方、成人学習者には有利な点ばかりでなく、不利な点も少なくない。具体的には、a. 在職者の場合は学習・研究上の時間的制約が大きい、b. これまでの人生経験が時として柔軟な発想を妨げる、c. 他の大学院生と授業時間外での切磋琢磨する機会が限られる、などの点である。従来のような単線的・機能主義的なインストラクショナル・デザインの枠組みに加えて、個別指導的でかつ相互的、課題探求的なアンドラゴジーモデルを組み合わせることが重要である。 申請者は大学教職員を対象とした研修会、社会人向けセミナーの場を通して、先行研究で明らかになった成人学習者の特性を活かした教授法モデルの構築と実践、修正を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度中に申請者が大学を異動することが突然内定したため、その諸手続や職場における残務整理に追われ、この科研の研究内容に集中する時間をとることが至難であった。特に、平成25年秋以降にはアメリカもしくはイギリスの大学における社会人学生への教育・学習支援について訪問調査を行う予定であったが、時間をとることができず、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研は今年度が最終年度にあたる。最終年度に外国調査を行っても、それを日本の大学に適した教授法モデルとして修正・応用する時間が限られている。このため、外国調査をあきらめて、日本国内の大学訪問調査に専念する。2年間にわたって蓄積・整理してきた先行研究に、国内調査の成果を踏まえ、日本の大学の社会人学生に適した教授法・研究指導方法を抽出したい。その成果を高等教育学系の国際学会で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者の異動が内定したため、その手続きや残務整理・引き継ぎ等に忙殺され、研究活動に十分な時間を割くことができなかった。本科研で予定していた外国調査を実施することができなかった。 平成25年度に予定して、結果的に実施できなかった外国調査については、26年度には実施しないこととする。その代わり、日本国内の大学調査を行い、日本の大学に適した社会人学生の教育・学習支援について改善すべき課題を明らかにしたい。
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