2012 Fiscal Year Research-status Report
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24653227
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 雄飛 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90580738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 健一郎 大阪国際大学短期大学部, ・, 講師 (60379229)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 科学 / 技術 / 玩具 / 国際研究者交流 / ドイツ / フランス / アクターネットワークセオリー |
Research Abstract |
平成24年度は研究代表者の藤田,分担者の久保田,協力者の渋谷ともに,「科学と技術を巡る教育思想史」に関する基礎研究を行った。具体的には,藤田は啓蒙主義期に「観察」という手法が人間と動物に関する「科学」として立ち上がってきたことについて検討を行った。また,人間と動物(の境界)については,旧来の象徴による区分が今日の進化心理学における最新の「科学」研究によって精緻に分類されつつあることを確認した。 久保田は「教育の科学・文化史」の方法論の研究とともに、次年度以降の個別研究の準備を行った。個別研究においては、玩具の教育化の過程において、幼稚園における恩物などと、家庭で子どもに与えられる教育玩具の二つの流れを追った。そこに並行して見られるものは、教育玩具成立期には、大人たちは未だ玩具の教育的意義を受け止めきれず、子どもの周りに位置づけるのみであったが、次第に玩具が子どもの内面を操作する物として明確な役割を担って行ったことである。 渋谷は,フロイトの事後性概念を、当時の記憶をめぐる科学的な研究というコンテクストにおいて検討し、フロイトの発達論を事後性の発達論として明らかにした。また,フロイトによる精神分析の発明を、メスメル主義の装置と実験科学の装置という観点から検討し、精神分析における科学性を明らかにした。前者では、アクターネットワークセオリーのネットワーク概念をラカンの連鎖概念やフロイトの心的装置の記述によって拡張することを試みており、後者ではアクターネットワークセオリーにおける記述とフーコーの「装置」概念を組み合わせて、科学技術の展開を記述する試みを展開した。なお,前者の成果をまとめた論文「事後性の反発達論的な発達論―フロイトの「心的装置」と「事後性」について」は,教育哲学会の学会誌である『教育哲学研究』(107号)に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成24年度は,研究代表者・分担者・協力者ともに,「科学と技術を巡る教育思想史」に関する基礎研究に十分従事することが出来た。各人がそれぞれの関心テーマをもとに,その分析対象を絞り込んでいくことに集中することが出来たとともに,それぞれに基礎的な資料の何が必要で何が足りていないかということを確認できたと考えられる。また,方法論としてのアクターネットワークセオリーについては,協力者の渋谷が思想の形成過程を対象として分析することの可能性について突破口を開き,その成果が学会においてもいち早く評価された。特に,投稿論文の掲載(予定)という形で成果が出たことについては,極めて順調に研究が進展していることとして評価可能だと思われる。また,藤田・久保田については,24年度に検討してきた具体的な事象を「科学と技術を巡る教育思想史」の分析枠組みによって再構成していくという課題が明らかになった。この点については平成25年度からも研究を行っていく過程で,順次クリアして行く予定である。なお,ここまでの研究は概ね計画書通りのものであり,順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究の推進方策としては,基礎研究に従事した今年度と同様に,資料収集とその分析を主に行う予定である。特に,国内において収集可能な基礎文献および資料については可能な範囲で分析を行う。また,この基礎研究に加えて,「科学と技術の教育思想史」の方法論であるブルーノ・ラトゥールらのアクターネットワークセオリーの理論の可能性を明らかにするために,基礎研究によって得られた知見を分析していくこととする。その際,各人が独立して検討を行うのではなく,研究会に基礎的資料の分析を持ち寄り,議論していく作業を通して分析のあり方や他の可能性を拾い上げ,研究自体をブラッシュアップしていくことを目指す。それゆえ,今年度は研究会を夏と冬の2回組織するとともに,個別には成果を学会で発表して行くこととする。現時点では,藤田が九州教育学会においてラウンドテーブルを企画して発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の科研費の使用については,主に資料および書籍の購入と取り寄せを予定している。 藤田は,「観察」科学を巡る内外の歴史学や哲学関連の研究所を購入するとともに,子どもを「科学的に見る」ということが広く浸透していった19世紀の資料を収集する予定である。その際,外国の図書館の資料およびそのコピーを可能な範囲で取り寄せる必要がある。 久保田は,「玩具」に関する資料を収集するとともに,玩具と子どもをともに見る「教育者」の関わり方について扱った理論書と教育書,さらにはそうした教育実践が報告された教育関連雑誌や育児書などを網羅的に収集する予定である。また,海外のおもちゃを取り扱う企業による解説書やパンフレット等の取り寄せも可能な範囲で行う。 渋谷は,精神分析とその成立史に関連する内外の研究書や,思想の成立に関連する研究書を購入し,研究を行う予定である。また,フロイト関連資料やメスメルなどに関係する資料および書籍についても可能な限り収集することとする。 また,関西と九州で各1回ずつ研究会を組織するとともに,学会での発表を行うため,旅費を申請する予定である。なお,研究会については,研究代表者・分担者の状況を見て,予定された夏冬2回の会をいずれも関西において開催する可能性がある。
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Research Products
(2 results)