2013 Fiscal Year Research-status Report
梅根悟における新教育観の形成と転換-戦後教育の思想史的研究-
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24653228
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
渡邊 隆信 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (30294268)
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Keywords | 梅根悟 / 新教育 / 戦後教育 / 教育思想史 |
Research Abstract |
平成25年度は主に、1950年以降、梅根悟における発達史的な新教育観が問題史的な新教育観へと転換するにいたった経緯と特質について考察した。 具体的には、第一に、梅根が生涯に著した800を越える著書論文のなかから、1950年以降の問題史的な新教育観が表現されている著書論文を幅広く収集・分析した。作業に当たっては『和光大学人文学部紀要』第16号(1980)所収「梅根悟著作論文目録」及び和光大学附属梅根記念図書館編『梅根悟著作目録』を参照しながら、問題史的な新教育観に関連する著書論文をリストアップし、順次収集し読み進めた。時期的には、①『新教育への道』増補改訂版(1951)や『世界教育史』(1955)を発表した1950年代前半と、②『世界教育史大系』全40巻(1974~1978)を手がけた1960年代後半から1970年代、の2つの時期が特に重要であることから、この時期の著書論文を中心に分析を進めた。 第二に、梅根悟がどのような文献に接することで自らの新教育観を形成し、また変化させたのかを探るために、和光大学附属梅根記念図書館編『梅根悟寄贈図書目録』を手がかりにして、梅根の蔵書を分析するとともに、同図書館で現地調査をおこなった。 第三に、平成24年度に実施した梅根の関係者(長尾十三二氏、中野光氏、原聡介氏)へのインタビュー調査で得られた情報を改めて時系列的に整理する作業を通して、梅根の発達史的な新教育観から問題史的な新教育観への転換について考察するための論点を抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、日本の戦後の教育学研究と教育実践に多大な影響を与えた梅根悟(1903~1980)を取り上げ、彼の生涯にわたる教育思想の展開について、新教育観の形成と転換という観点から考察することである。 具体的には、①大正期から戦後の1950年頃にかけて、彼の発達史的な新教育観が形成される過程を明らかにするとともに、②1950年代以降、発達史的な新教育観から問題史的な新教育観へと転換するにいたった経緯と特質について考察することを目的としている。 研究2年目の平成25年度の研究計画は、これら2つの課題のうち、主に②の発達史的な新教育観から問題史的な新教育観への転換について研究を進めることであった。25年度はこの研究計画にしたがい、1950年代以降の時期を中心に、梅根の著書論文を収集・分析するとともに、彼が所持していた蔵書の内容傾向を概観する作業をおこなった。そうした研究を通して、梅根の新教育観が変化していった経緯と問題史的な新教育観の基本的な特質を明らかにすることができた。成果の一部は、所属大学の学部紀要にまとめた。 以上の理由から、本研究の目的の達成度について、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年となる平成26年度には、24年度と25年度で扱いきれなかった梅根の著書論文等を読み進めるとともに、発達史的な新教育観から問題史的な新教育観へと転換していく1950年前後の著書論文を改めて詳細に分析する。特に、『新教育への道』増補改訂版(1951)では、初版(1947)から半分近くの内容が書き改めている点に注目し、改訂箇所を初版と比較分析したい。あわせて、梅根の関係者へのインタビュー調査を追加でおこないたい。そのうえで、3年間の文献資料分析とインタビュー調査の結果を統一的に解釈しながら、梅根における新教育観の形成と転換について総括する。解明できた研究成果は、学会発表等を通して広く他の研究者から批判を仰ぐ機会を持ちたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
梅根の関係者(もと指導学生)へのインタビュー調査を予定していたが、調査対象者の事情により直接お会いしてインタビューをおこなうことができず、手紙と電話での連絡となったため、予定していた出張旅費が不要となった。 梅根の関係者(もと指導学生)で面談可能な人物へのインタビュー調査を追加でおこなうとともに、和光大学附属梅根記念図書館等で梅根に関する文献資料調査をおこなう。
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