2014 Fiscal Year Annual Research Report
梅根悟における新教育観の形成と転換-戦後教育の思想史的研究-
Project/Area Number |
24653228
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡邊 隆信 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30294268)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 梅根悟 / 新教育 / 戦後教育 / 教育思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、日本における戦後教育学と教育実践の展開に大きな影響を与えた梅根悟を取り上げ、新教育観の形成と転換という観点から彼の教育思想について考察することである。研究最終年度にあたる26年度は、1年目と2年目の研究成果を踏まえて、発達史的な新教育観が問題史的な新教育観へと転換する過程をより詳細に検討した。 作業にあたっては、『和光大学人文学部紀要』第16号(1980)所収「梅根悟著作論文目録」及び和光大学附属梅根記念図書館編『梅根悟著作目録』を参照しながら、筑波大学附属図書館等での現地調査をおこない、これまでに入手していなかった著書論文を収集し分析を進めた。 こうした作業から、梅根の新教育観の転換について次の3点が明らかになった。第1は、従来指摘されていた『世界教育史』(1955)よりも早い段階で問題史的な新教育観への移行が開始されていたことである。すなわち、『西洋教育史』(1952)ではすでに、新教育運動が担っていた帝国主義政策の尖兵の養成という側面についても言及されており、『世界教育史』で明確になる問題史的な新教育観の萌芽を見いだすことができた。第2は、『西洋教育史』及び『世界教育史』では、新教育が3段階、すなわち帝国主義的な人材養成が目指された段階、児童中心主義的な教育改革運動の段階、さらに教育改革を通して大人社会の変革が目指される段階に分けて把握されていることである。第3は、新教育観の転換が新教育の全面否定を意味するものではなかったということである。新教育運動の3つの段階に関する記述を分析するならば、確かに梅根は問題史的な新教育観によって第1段階の新教育運動がもつ帝国主義的性格を厳しく批判するが、同時にその後の新教育運動の展開の中で生じたさまざまな教育改革の思想と実践を評価し、特にその社会改革的な可能性に期待していたことを確認することができた。
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