2013 Fiscal Year Research-status Report
保育所・幼稚園から小学校への接続のための「学校ごっこ」プログラムの試み
Project/Area Number |
24653231
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
七木田 敦 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60252821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡花 祈一郎 福岡女学院大学, 人間関係学部, 講師 (50512555)
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Keywords | 保幼小連携 / 保育所 / 幼稚園 |
Research Abstract |
本年度は福岡県内および佐賀県内の保育所・幼稚園での保幼小連携の実践についての視察を行った。福岡市では保育者と小学校教諭の合同での行事や合同の研修会が行われていた。また、保育者が小学校を訪問するなどの「見学会」などを実施している市町村がある。しかしながら、実際には小学校側は「自由に(勝手に)見に来てください」というスタンスであり、実際には形骸化しているとの保育所・幼稚園側の声も聞かれた。このように合同の研修会や小学校の見学会など仕組みをつくっても、有効に活かされていない連携事例が散見された。連携が上手くいっていない事例では、保育所・幼稚園側のニーズと小学校側のニーズとが相互理解ができないまま行政主導でシステムをつくって実施しているところが多かった。 他方で、佐賀市では、教育委員会が主導して相互理解をしながら保幼小連携を行っている。保育所・幼稚園側から小学校側に伝えたいことと(「えがお」)、小学校側が保育所・幼稚園側に伝えたいこと(「わくわく」)を整理して一冊の連携ブックを作成し佐賀市内の全ての保育所、幼稚園、小学校に配布している。内容としては、「えがお」については「0歳からの遊び実践」、「遊びの事例」を通して保育所・幼稚園での育ちについて書かれている。「わくわく」については、保・幼での経験を受けとめたうえでの小学校側での配慮や、「ことば」、「かず」、「せいかつ」などの導入の配慮や指導案などが掲載されている。そして、入学直前に新小1の担任を対象とした研修会を行っており、その際はこの連携ブックを活用しながら保育者が講師として研修を行っていた。 佐賀市の取組みの特徴は、保育所・幼稚園側と小学校側の両者が連携ブックという一つの冊子の作成を通して相互理解や要求を明示化していることであり、行政がそれをサポートするという仕組みづくりを行っていたことであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで保育所や幼稚園、小学校のそれぞれの固有な目的を尊重し、類似した発達特性をもつ子どもを無理なく、漸進的に保育所あるいは幼稚園から小学校の低学年へ移行させるためには、相互の目的や特性を理解し合った連携が不可欠であることは幾度となくいわれてきたことである。しかしこの問題の解決にあたっては、たとえば低学年において一斉授業やコマ切れな時間割などを検討や一人ひとりの子どもの発達や文字指導、生活科などを接点にした交流会や研究会の設置などが実施されてきたにすぎない。本研究では、「学校リテラシー」習得を基盤にした「学校ごっこ」を保育文化の文脈の中で実施しようとするものである。本年度の実践では、特にプログラム化に当たり、幼児の習得をPDCA(計画―実施―点検―改善)サイクルで構想しており、教育の連携や接続を実践場面から明らかにするという点で有意義な試みであった。また学校リテラシーの習得を、幼児一人ひとりによるポートフォリオを作成することにより評価が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の二点について、研究を進める予定である。 1.保育者、小学校教員に対しての意識調査(七木田・岡花が担当) 北海道、千葉県、東京都、広島県、宮崎県の幼稚園(10園)教員(63名)と小学校(12校)教員(112名)を対象に、幼稚園教育(あるいは小学校教育)に対する意識や期待に関するアンケート調査を実施する(七木田・杉村が担当)。アンケート内容は具体的には次のようなものを含む。(1)幼稚園、小学校の相互の連携の実績について。(2)幼稚園(あるいは小学校)に期待すること。(3)小学校教育要領(あるいは幼稚園教育要領)についての理解。(4)連携・接続の問題点などである。 2.「学校リテラシー」のレパートリーの収集 広島県内の小学校低学年クラスを対象に、大学教員、大学院生、そして保育者が授業の観察を通じて、「学校ごっこ」で課題として取り上げる「学校リテラシー」のレパートリーをビデオ録画したものから収集する。収集されたレパートリーを、KJ法にて分類し、一覧にして提示する(七木田・岡花が担当)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は当初予定していた「学校リテラシー」の指導を連携の課題として実践している保育所幼稚園の実態調査(七木田・岡花が担当)おもに学校リテラシーを習得することを目的に「学校ごっこ」を取り入れている幼稚園・保育所(北海道1園、盛岡市1園、宝塚市1園、広島市2園)にて訪問調査を予定していたが、受け入れ先との調整が十分でなく実施できなかったできなかった。 「学校リテラシー」の指導を連携の課題として実践している保育所幼稚園の実態調査(七木田・岡花が担当)おもに学校リテラシーを習得することを目的に「学校ごっこ」を取り入れている幼稚園・保育所(北海道1園、盛岡市1園、宝塚市1園、広島市2園)にて訪問調査を実施するために使用する。調査では、(1)「学校ごっこ」の内容、(2)保幼小連携の実態、(3)保育者の意識、(4)評価の方法、(5)保護者との連携、についてである。併せて、小学校1年生のクラスに保育経験者を派遣する「学校生活指導員」の制度を実施している東京都立川市の保幼小連携の実際についても訪問調査を実施のために使用する。
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