2012 Fiscal Year Research-status Report
特別支援教育におけるパートナーシップ原理モデルの確立に向けた比較教育学的研究
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24653246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
河合 康 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (90224724)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / 特別支援教育コーディネーター / パートナーシップ原理 |
Research Abstract |
本年度は、第一に、通常の学校においてパートナーシップ原理の中核をなす特別支援教育コーディネーターの養成研修の実態と研修需要について検討を行った。調査内容は①特別支援教育コーディネーター養成研修の参加状況、②特別支援教育コーディネーター養成研修の内容と形態、③特別支援教育コーディネーター養成研修の研修需要、等であった。165名(小学校70名、中学校46名、高等学校49名)からの回答が得られ、回収率は77.5%であった。 分析の結果、全ての学校種に共通して求められる研修需要として「特別支援教育コーディネーターの役割・活動内容についての知識理解」「教職員への特別支援教育の理解・啓発」「福祉機関との連携方法」「保護者支援の方法」「発達障害のある児童・生徒の行動面の対応方法」があげられる一方で、学校種によって異なる研修需要もあることが明らかにされた。これらを踏まえて、より具体的な内容や方法について学校種ごとに検討していく必要性が提言された。 第二に知的障害特別支援学校の「日常生活の指導」におけるパートナーシップ原理に焦点を当て、学部間の系統性・連続性はどのような状況にあり、また学部間でどのような連携を図っているのかについての調査研究を行った。全国の知的障害特別支援学校296校の895名(回収率73.7%)から回答が得られた。分析の結果、①日常生活の指導の時間は、全ての学部で、9割以上が帯状の時間割を設定していること、②日常生活の指導に当たっては、個別の教育支援計画の一層の活用が今後の課題であること、③日常生活の指導の充実のためには、保護者との連携が不可欠であること、④障害が重度の場合は、生活年齢を踏まえた対応がしにくく、学部間の一貫性・系統性が不十分であり、今後の課題であることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別支援教育におけるパートナーシップ原理を検討するに当たって、通常の学校と特別支援学校の両者に対する研究が順調に行われた。次年度以降、中等教育段階以降や、福祉、労働、医療等の他機関とのパートナーシップ原理に関する研究を遂行すれば、最終年度には当初設定した目的の達成は可能であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を比較教育学的観点から検討するため、第一にアメリカの研究を遂行する。<目的>アメリカの特別支援教育におけるパートナーシップ原理の実態・課題を明らかにする。<方法>「障害者教育法」において作成が義務づけられている以下の3つの計画、すなわち「個別教育計画」、「個別家族サービス計画」、「個別移行計画」に焦点を当てて分析する。主に用いる資料は、連邦レベルの法令、議会の議事録、公聴会などの公的資料である。<内容>1.「障害者教育法」が施行されて以降、毎年、政府から発行されている同法に関する議会への年次報告書の分析を行い、パートナーシップ原理を確立するための活動がどのように行われ、どのような行政の施策が講じられてきたのかを、上記の3つの計画を中心に解明する。2.「障害者教育法」施行以降に生じた聴聞会への提訴事例の分析を行い、各裁定で同法のパートナーシップ原理に関する規定がどのように適用されてきたのかを明らかにする。3.「障害者教育法」施行以降に生じた判例の分析を行い、各判例で同法のパートナーシップ原理がどのように扱われてきたのかについて明らかにする。4. 障害児の保護者、学校関係者、関係諸機関、行政当局者等に対して、パートナーシップ原理に関する聞き取り調査を行う。 日本については、パートナーシップの相手機関における実態、現状認識、及び問題・課題を明らかにする。<方法>日本研究aの結果、パートナーシップの機関として抽出された全国の生涯学習、医療、就労、福祉に関する関係機関各200、合計1000機関を対象に、郵送法によるアンケート調査を実施する。<内容>1.個別の教育支援計画の策定におけるパートナーシップの実態、2.学校との連携の実態(頻度、内容、方法等)、3.パートナーシップを図る上での課題・問題、等
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
比較教育学的研究の対象国としてアメリカを取り上げるため、出張旅費に占める割合が多くなる。また、国内においては、約1000機関を対象に、郵送法によるアンケート調査を実施するため、そのための経費(切手、封筒等)に充てる金額が大きくなる。また、データの整理・入力・分析のための研究補助のための謝金が必要となる。
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