2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24653270
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
藤田 雅文 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50021449)
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Keywords | 教材開発 / 認知科学 / 理解力 / 近時記憶 / 長期記憶 / 作業記憶 |
Research Abstract |
小学校教育では、児童間に授業内容の理解力、記憶力(=受け皿)の差が存在して、授業の消化度に大きな差が生じているのが現実であろう。従って、授業の効果を高めるためには受け皿の差を小さくするトレーニングを行うべきである。そこで、そのための有効な教材を認知科学の視点から開発せんとするのが本計画である。以下、25年度の成果について述べる。 近年、認知能力における作業記憶力の重要性が注目されているが、本研究においても、作業記憶力を検証できて、かつその向上を期せる課題の開発に努めた。以下、幹たる3課題について示す。(1)写真による文脈記憶課題:文脈と、文脈の要素たる個別の話に分けて分析すると、明らかに文脈よりも個別の話に重点を置いた作業記憶がなされる傾向が認められた。これでは、得た情報に脈絡がなくなってしまう。よって、前段の話を作業記憶として頭に置きながら次の話を聞く姿勢を意識的にトレーニングする課題の制作に努めた。なお、この課題においては、そのテーマの新規性が重要であることが明らかになった。(2)暦課題:西暦、和暦、誕生日、年齢、干支などの暦に関わる計算を、紙に書かないで頭の中で行うことは作業記憶力と時間見当識の強化に極めて有用と判断された。さらに答えの訂正を禁止してトレーニングすることも、作業記憶力の向上の視点から大切とわかった。なお、この課題の最大の利点は、家庭学習により明らかな向上が見込めることである。つまり、日常的に努力する習慣の獲得に利が認められた。(3)描画課題:スクリーンに映った視覚対象について、代表者が空間的に正確に記憶するための手順を作業記憶として提示する。解答者は映像が消えてから、解答用紙のスクリーンと同じ縦横比率の枠内に作業記憶をたどりながら映像を再現する。この課題では、作業記憶量が多くなるので、絵の各部の表現の正確さで作業記憶力が計測できる利点があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理解力と記憶力の向上を実現する教材の一つの柱として、誰にも身近な花(特に野草)を使うアイデアが浮かんだ。理解力と記憶力の向上をめざす課題としては、解答者の長期記憶で対処できない新規性が重要である。この点において、花を生物学的視点から掘り下げれば、興味深い新規な〝理〟を盛り込んだ良い課題がいくらでも創れる。しかも、身近な花には、記憶の基盤たる時間と空間の情報が自然に付随する。従って、身近な花は、本研究計画にとって、極めて有用な素材と位置づけるに至った。しかし、適切な花の探究と撮影に、多大の時間を費やしたために、研究計画は、当初の予定通りには進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間、講座を通じて、理解力と記憶力の向上を実現するための課題の開発を行って来た。24年度には、当初の想定を考え直さなければならない多くの事実に直面し、研究は新たな模索の段階に戻った。そして、25年度には、試行錯誤の中から、本研究計画の幹になり得る複数の作業記憶課題を開発できた。分水嶺を越えたと考えている。従って、26年度は、それらの課題の改良改善に邁進するのみである。ただし、高齢者対象の講座から産みだされた課題を小学生に適用するには、課題の根幹は同じだが、枝葉末節をもおろそかにはせず、慎重の上にも慎重に進めることを肝に銘じたい。思いもかけない脳の受け入れ状況の違いも想定されるからである。
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