2012 Fiscal Year Research-status Report
日韓の教員養成における経済教育に関する総合的比較研究
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24653272
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
裴 光雄 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60263357)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日韓の社会科教育 / 日韓の経済教育 / 学習指導要領 / 教育課程 / 社会科教科書 / 指導書 / 現地授業観察 |
Research Abstract |
韓国経済教育学会から研究報告の招聘を受け、2013年1月24日にソウル大学湖厳会館で行われた学術大会にて、韓国外国語大学のハン・ギョンドン教授と共同研究報告を行った。Kyungdong Hahn and Kwang Woong Woong(2013), Financial Literacy of Korean-Japanese High School Students, "2013 Proceedings Economic Education in East Asia", 31-42: Korea Economic Education Association, East Asia Conference on Economic Education. 日韓の教員養成における経済教育の特徴と課題を各々分析・摘出し、両国にとって相互に有益な示唆点を見つけ出すことに、本研究の目的がある。両国のナショナルカリキュラムである日本の学習指導要領社会科と韓国の社会科教育課程、解説、指導書、教科書および先行研究の比較分析・考察を踏まえた上で、日韓の教員養成系大学・学部における経済教育カリキュラム・シラバスの検討・分析、学校現場(小・中・高)での経済教育の実践観察、現場教師・生徒・研究者とのディスカッションやヒアリング調査を実施する。 初年度の平成24年度は小学校段階における韓国経済教育に関して、地道な研究を行った。その内容と特徴を韓国国定教科書の分析を通じて把握した。日韓とも小学校段階での社会科は一応、統合科目であるので、社会科の全体的内容・特徴から把握する必要がある。よって、韓国小学校社会科教科書を計8分冊、総1,100ページを読み込み、社会科全体の内容・特徴について纏めたノートを作成した。昨夏、大学協定校のソウル教育大学附属図書館に行き、小学校社会科教科書の指導書を資料収集・複写した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」は2つある。そのうちの一つであり、研究初年度の年間計画に挙げた両国のナショナルカリキュラムである日本の学習指導要領社会科と韓国の社会科教育課程、解説、指導書、教科書及び先行研究の比較分析・考察を行うことに関しては、ほぼ計画通りに研究は進展した。「研究実績の概要」で叙述したように、韓国小学校社会科教科書を計8分冊、総1,100ページを読み込み、社会科全体の内容・特徴について纏めたノートを作成したことは、多大な労力を費やしてこそ可能であった。この作業によって韓国小学校の社会科全体と経済分野に関する内容と特徴を抽出・整理できた。具体的には韓国の小学校社会科では日本の産業学習に止まらず、経済学習を行っているが、その内容が機会費用、トレードオフ、希少性といった経済学の基本的な考え方から市場経済の進歩性、政府の役割、企(起)業家教育、消費者教育などまでに至っている。韓国小学校社会科の経済分野に関する教科書の単元の分析は既に完了した。 また経済分野だけでなく、社会科の全体おいても特徴と内容を把握・整理したが、その際既存の先行研究も詳細にサーベイをし、本研究の水準を引き上げることができた。例を挙げればイ・ジョンソク「社会科教育課程と良い教科書に対する提言」『教科書研究』第64号、2011年6月(釜山大学教授)やモ・キョンファン「教科書開発の経験を通じて見た社会科教育課程」『教科書研究』第61号、2010年9月(ソウル大学教授)などの韓国語文献をフォローした。ただ、中・高等学校社会科の教科書分析を開始できていないので、早急に作業を進める。 もう一つの研究目的である日韓の教員養成系大学・学部における経済教育カリキュラムの検討・分析、学校現場(小・中・高)での経済教育の実践観察、現場教師・生徒・研究者とのディスカッションやヒアリング調査の実施に関しては、今年度精力的に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず昨年の研究成果を2つの論文で発表する。一つ目の論文は「韓国小学校社会科教科書の内容・編成とその特徴」である。この論文で韓国小学校社会科教育に関して教科書分析を以て、明らかにする。二つ目の論文は「韓国の小学校社会科教科書における経済教育」である。研究対象を経済分野に絞って論述する。これらの執筆予定論文は既に準備作業を終えているので、後は指導書と先行研究を丹念にフォローして、夏休みには書き上げる。 さらに平成25年度は中・高等学校社会科教科書の経済領域の分析まで進める。中・高等学校社会科教科書は検定教科書なので、数種類の教科書がある。これらの教科書の経済領域を全て読み込み、内容と特徴を整理して研究ノートを纏める。 また韓国の小・中・高の教員養成における経済教育に関する現地調査を行う。具体的にはソウル・釜山・全州・済州などの各教育大学、ソウル大学、仁荷大学校、慶尚大学の各師範学部にて現地調査を実施する。具体的には経済教育カリキュラム・シラバス・授業評価等に関する資料収集を行うと同時に、経済科目担当教員へのヒアリング調査・設問調査を行う。設問内容としては、次のような内容を考えている。「韓国の教員養成における経済教育の特徴は何か」「目標をどのように考えているか」「問題点は何か」「評価すべき点は何か」「改善すべき点は何か」「今後、経済教育をさらに発展させていくために必要なことは何か」「日本の経済教育に関してどのように考えているか」等々である。加えて、各大学の附属学校で実際にどのような経済の授業が行われているか観察し、教師たちに対してもヒアリング・設問調査を実施する。授業の目的・方法・内容・評価・学生の満足度等に関して、設問する。また、韓国独特の特目高(特別目的高校)と呼ばれるエリート校で実施されている経済教育の内容に関しても、同様の現地調査を行う。申請時の計画通りに実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成25年度)は、まず海外旅費によって、韓国の各教育大学と同附属小の教育現場と同時に韓国の各師範学部と同附属の中・高の各教育現場を年2回訪問し、経済学科目担当教員および社会科担当教師へのヒアリング調査・設問調査、資料収集、授業観察などを行う経費を計上する(5日間、13万円×2回=26万円)。 国内旅費は学会報告参加と遠方の現地調査ヒアリングを1回ずつ、年合計2回分の出張経費を計上している(6万円×2回=12万円)。設備備品費(書籍・資料等)は昨年と同様、大学の個人研究費を以て充当するので計上しない。人件費・謝金は現地インタビュー・ヒアリング調査の謝金、各教育大計4ヶ所、各師範大学計4ヶ所、附属学校計4校の合計12ヶ所、1ヶ所当たり1万円で算出し、総額12万円を計上した。 これらで次年度に割り当てられる直接研究費50万円が支出される。なお前年度繰り越し金額(165,817円)は韓国経済教育学会での研究発表に伴う訪韓のための海外旅費で主に使用する予定である。
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