2013 Fiscal Year Research-status Report
日韓の教員養成における経済教育に関する総合的比較研究
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24653272
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
裴 光雄 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60263357)
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Keywords | 韓国小学校社会科教科書 / 学年別特徴分析 / 日韓キャリア教育 / 日韓経済教育 |
Research Abstract |
当該年度の研究実績は大きく2点あり、それぞれ研究論文にまとめられている。一つは、韓国の小学校社会科教科書を学年別にその内容の諸特徴を分析したものである。特に地理領域と一般社会(公民)領域に焦点を当てて分析した。第3学年では、グローバル視点を積極的に取り入れて、他国との比較から自国のことを学ぶようにしていること、学問的定義や方法論(科学的方法論)を重視する性格も濃く滲んでいること、伝統文化を学ばせる単元では、食べ物・余暇・遊びを取り上げていること。また、多文化理解に関わる内容が盛り込まれていること。第4学年では、「社会参加学習としての社会科」や「社会参画を目指した社会科」の色彩を強く帯びた内容が見られること、一定の政治教育を行っていること、現代および将来に亘る韓国社会の焦眉の問題を取り上げ、考えさせていること。第6学年では、本格的な経済学習を行っていること、合理的意思決定の問題について取り上げていること、民主主義を日常生活で実践していこうとする姿勢が重要であることまで教えていること、最後に朝鮮半島の統一の課題を超えて、さらに人類全体の問題に目を向けさせ、締め括っていることが特徴的である。 もう一つは、日韓小学校社会科教科書をキャリア教育に焦点を当てて、比較研究したものである。職業的自立という側面では、韓国の小学校社会科教科書も日本のそれとそれ程大差はなかった。ただ、韓国の教科書では職業を教える際、学術的な産業分類によって様々な種類があることを記している点、個人が勤める企業の発展が社会・国の発展に繋がっていくことをより意識的に関説している点、企(起)業家教育に繋がる内容が記述されている点、さらにキャリア教育のもう一つの経済的自立の側面から見れば、韓国の教科書では徹底した経済教育の内容が体系性を持って豊富に展開されていることが、日本の教科書には見られない顕著な特徴でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」に見られるように、歴史分野を除いて韓国小学校社会科教科書の分析を研究論文としてまとめており、また日韓社会科・経済教育に関して、キャリア教育に焦点を当てながら分析したものも研究論文として公表している。 韓国経済教育研究者との学術交流と通じて、韓国経済教育の諸特徴に関して、「生きた」学術的知見・情報を豊富に得た。具体的には2013年度日本経済教育学会の全国大会(滋賀大学)時に韓国の慶尚大学のキン・ギョンモ教授と仁荷大学のチャン・ギョンホ教授を招聘して、日韓経済教育共同研究会を開催し、彼らから韓国の経済教育学界では、例えばどのような分析方法論をとっているのか、どのような研究分野が現在最も注目されているのか、等々について知ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論・文献研究の面では、韓国経済教育学界における経済教育の特徴を日本との比較でまとめることを先ず行わなければならない。その作業は基本的に韓国経済教育学会の学術雑誌、『経済教育研究』のバックナンバーから抽出した重要な既存の研究論文を読み込むことである。申請者は2014年8月に韓国済州大学にて開催される韓国経済教育学会の夏季全国大会に報告者としてエントリーしており、「日韓経済教育の比較考察と示唆点」というテーマで報告する。この報告の原稿を執筆する過程で、上記の作業は進められる。したがって、今後の研究が具体的に推進される。 実践研究の面では、2013年度末に研究協力校であるソウル教育大学附属小学校の社会科教員2名と社会科の経済領域の授業参観に関して、了解を取り付けている。よって、2014年5月と9月の2度にわたって訪韓し、授業参観および撮影を行う。その授業分析を通じて、日韓社会科経済領域の授業実践の比較研究としてまとめ、公表する。 さらには中学校社会科における理論・実践研究も推進し、最終的に本研究課題である「日韓の教員養成における経済教育に関する総合的比較研究」として仕上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は9月と3月の2度訪韓し、研究交流、資料収集等を実施する予定であったが、勤務校での仕事等により、3月の1度しか訪韓できなかったために、その差額分が次年度に繰り越されることになった。 次年度(平成26年度)は、まず海外旅費によって、研究協力校であるソウル教育大学附属小学校での授業参観、同教員との学術交流・討論及びそのための事前協議のための訪韓経費3回分を計上する(5日間、12万円×3回=36万円)。 次に韓国経済教育学会の理事で仁荷大学のチャン・ギョンホ教授を6月に招聘するための経費を海外旅費によって計上する(4日間、14万円)。次年度の日韓経済教育共同研究会に関する事前協議と今後の学術交流に関する話し合いを行う。また本学において「韓国の経済教育について」という特別講義を行ってもらう。 これらで次年度に割り当てられる直接経費50万円が支出される。なお前年度繰越金額(92,393円)は韓国経済教育学会での研究発表に伴う訪韓のための海外旅費で使用する。
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