2012 Fiscal Year Research-status Report
活字メディアの活用実態・可能性と読者の社会認識形成に関する実証的研究
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24653281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田口 紘子 鹿児島大学, 教育学部, 講師 (10551707)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ / 活字メディア / 社会認識 |
Research Abstract |
本研究は活字メディアの活用の可能性とそれによって形成される読者の社会認識を、社会形成者の育成をめざす社会認識教育の観点から解明することを目的としていた。本年度は先行する社会認識についての研究調査研究を収集・整理するとともに、中学生を対象にした新聞記事の読解と活用についての予備調査を行った。 社会認識教育学における先行調査研究については、1960年代には児童・生徒の歴史意識や総合的思考力などの調査が行われていたものの、調査質問や調査問題を開発するための視点や論理的枠組みを研究者が明確に意識しておらず、調査結果を授業の改善に役立てることが困難だったため研究は徐々に下火になっていったことを確認した。近年では小学生の経済に関する実証的調査がいくつか行われており、調査の論理的枠組みとして心理学や経済学の概念などが援用されている。しかしながら社会認識教育学的視点による調査研究を実施するためには、面接において子どもに意思決定を迫る質問を準備したり、子どもの思考の流れを読み取ることを可能とする設問を開発するなどの工夫が求められる。 上のような社会認識教育における調査研究の留意点にもとづき、新聞記事からわかる・推測できることと記事閲読後の疑問を尋ねる調査問題を開発し、中学校1~3年生約600名を対象に実施した。記事に書かれている内容や記事から推測できることをマル・バツで選択させる問いについては7割程度が正解しが、誤読する生徒も学年を問わず一定程度いることがわかった。また疑問を作らせる調査については、掲載した記事を使って疑問を作る生徒は5%前後に留まり、多くは日常的・常識的な疑問であった。調査問題中で新聞記事を活用し、主体的に思考させる調査問題へ改善する必要があることがわかった。来年度には本年度の課題を克服した予備調査を再度行い、教育における活字メディアの可能性を示す研究としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、先行調査研究の整理と予備調査を実施することができた。 予備調査では記事に書かれている内容や記事から推測できることの正誤を尋ねる問題については約7割の生徒が正答したが、記事の見出しだけに着目し誤読してしまう生徒や推論に失敗する生徒も一定程度いた。また提示した記事を読んだ後、記事内容をより詳しく知るために設定する疑問について尋ねる問題では、記事内容を発展させて疑問を作る生徒は非常に少なく、多くは日常的・常識的な疑問であった。これらの調査結果については日本NIE学会で発表することができた。 子どもたちが活字メディアの内容を発展させ、意欲的に調査するための疑問を作成することが、活字メディアの効果的な活用であると考えられる。来年度は記事内容と関連させて疑問が作成できるよう調査問題を改善し、再度の予備調査を試みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は短い新聞記事であっても、中学生がそれを効果的に活用して調査疑問を作成することは困難であることが明らかになった。 今後の調査においては調査問題を作成するための活字メディアの幅を広げ、活字メディアによる社会認識の違いを明らかにする。そのような活字メディアの候補としては、新聞記事(事実的記事・論説的記事・物語的記事・象徴的記事)、読み取りは容易であるが多様な解釈が可能な児童書、新聞記事よりは出来事が体系的に記された雑誌記事・書籍を考えている。 また調査問題において、子どもたちが活字メディアの効果的かつ主体的な活用ができるような問題の開発に取り組む。そして調査対象者の学校や年齢を広げることによって、活字メディア活用で形成される社会認識の年齢差も考察したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査問題の開発のための書籍費・文献複写費、調査実施のための打ち合わせ旅費や印刷費、調査結果の入力のための謝金、研究発表や資料収集のための旅費を予定している。
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