2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24654002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
都築 暢夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10253048)
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Keywords | 数論幾何 / 超幾何微分方程式 / カラビ・ヤウ多様体 / 整構造 / 保型性 |
Research Abstract |
研究代表者が構成した一般超幾何を周期積分に持つ数論的Calabi-Yau族の幾何的および数論幾何的な性質に関して成果を得た。特に、3次元の場合に特異ファイバーの既約因子の保型性を証明した。 研究代表者が構成した指数が1/2, ・・・, 1/2と1,・・・,1の一般超幾何関数を周期積分に持つ2を可逆にした整数環上の射影直線(λ直線と呼ぶ)上λ=0, 1, ∞以外の外で射影的かつ滑らかなCalabi-Yau族になる。当該年度の研究では、奇数次元n≧3におけるλ=1なるファイバーについて考察して、(i)λ=1における半安定族の構成、特に既約因子が2つで一方が有理的、他方Yが数論幾何的に面白い数論的多様体になること、(ii)Yの有理係数コホモロジーの決定、(iii)Yのホッジ数の決定、(iv)n=3のときはYは剛性Calabi-Yau多様体になり、中間次元のコホモロジーは重さ4のレベルが8のモジュラー形式からくることを証明した。(i)の判安定族の構成は、有理多様体族上の2重被覆であることと有理多様体上のブローアップを利用する。有理コホモロジーの決定においては、2重被覆になっていること、重み-モノドロミースペクトル系列の考察による。nが3の場合だけYに付随する複素多様体はCalabi-Yau多様体になり、Hodge数の考察から剛性となる。普遍楕円曲線族の直積からの写像を具体的に構成し、Yの保型性が幾何的に得られる。この結果は、3次元剛性Calabi-Yau多様体の保型性予想の具体的な一例になっている。また、保型性に関しては、連携研究者が数論的な証明を与えている。以上の結果は、東北大学で開催された数論幾何の研究集会「Arithmetic, differentials, and geometry」、IHESおよびパリ北大学において講演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が構成した数論的なCalabi-Yau多様体族は、2次被覆を利用した具体的な構成のために、その幾何や数論的な性質を具体的に考察することが可能である。また、構成やコホモロジーの決定では、重み・モノドロミー-スペクトル系列などの数論幾何や代数幾何の一般論が利用され、多重的な考察になっている。 当該年度の研究で得られた特異ファイバーの性質は、具体的なものであり、高次元多様体の非自明な例を与えている。特に、3次元の場合には、剛性Calabi-Yau多様体になり、幾何的な方法で保型性が得られた。モチビックな立場での研究であり、幾何的な証明が得られたことは大きな成果である。さらに、高次元の場合の保型性の考察に必要な準備が進んでいる。整係数コホモロジーや基本群の自明性なども着実に進んでいる。 この研究での考察は一つの例ではあるが、数論幾何、代数幾何、数理物理にまたがるものであり、数学を豊かにするものになっていると確信している。以上の理由で、当初の計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が構成した一般超幾何を周期積分に持つ数論的Calabi-Yau族は具体的な構成により与えられているために、数論幾何における様々な予想を検証が具体的に可能である。 具体的な問題としては、(1)偶数次元の場合の特異ファイバーの半安定族の構成とその既約因子のコホモロジーの決定、(2)一般の次元での特異ファイバーの保型性、(3)一般の奇数次元での特異ファイバーの中間Jacobianの代数性の考察(特に3次元の場合)、(4)高次チャウ群と基準写像の考察(全射性)、(5)2進モデルの構成などが挙げられる。保型性や帰順者の性質は、数論幾何で一般的に予想されているものではあるが、高次元の具体例は皆無と言ってよく、具体例を作ることに意味がある問題である。 半安定族の構成は、2重被覆とブローアップ方法を用いる。偶数次元の場合は、射影直線の2重被覆が必要になり、今までの方法を高度化する必要がある。特異ファイバーの保型性は、数論的なトレースの比較を行う方法で保型性を示し、最終的には幾何的な解釈を与えることを目指す。3次元の剛性Calabi-Yau多様体の中間Jacobianは楕円曲線になる。多様体が保型的な場合には、楕円曲線が代数体上定義されることが予想されている。また、Grothendieck予想からその格子のずれは超越的であることが期待される。この研究における超幾何の例は、族の中の特異ファイバーとして剛性Calabi-Yau多様体が入っていてる。単に単独の多様体として考察するだけでなく、退化を利用して、中間Jacobianの性質を調べる。 この研究で考察している問題は、数学の多方面の分野と密接に関係がある。既知の現象と以下に結びつけるかが、一つの大きなポイントになる。そのために、あらゆる方面からのアプローチを試みる。研究代表者は、連携研究者や関係する分野の研究者と密接に連絡を取りながら研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
この研究と関連する研究集会を2013年10月および2014年1月に東北大学で開催して、講演者を招聘するための旅費として使用した。しかし、予定よりも少なく済んだために次年度使用額が生じた。 この研究と関連する研究集会を開催して、外国人研究者を含めた4, 5人の招聘ために使用する。また、研究代表者と連携研究者の相互訪問と成果発表のための旅費として利用する。
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Research Products
(10 results)