2012 Fiscal Year Research-status Report
高次元時空内の事象の地平線とラグランジュ・ルジャンドル特異点論
Project/Area Number |
24654008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉屋 周一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127422)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 特異点 / ブレーン宇宙論 / ローレンツ空間形 / 光的超曲面 / コーシー地平面 |
Research Abstract |
平成24年度の実績としては、素粒子物理学やブレーン宇宙論における重要な空間である反ド・ジッター空間内の一般余次元の空間的部分多様体に沿った光的超曲面の特異点の特徴付けと対応する部分多様体の幾何学的性質について研究を推進した。反ド・ジッター空間は負曲率を持つローレンツ空間形で、因果律に関してミンコフスキー時空やド・ジッター空間という他のローレンツ空間形とは著しく異なった性質をもつ。その一つの典型的な特徴は、空間的超曲面からのあらゆる情報が届かない領域が常に存在することである。その境界がコーシー地平面とよばれ、ブラックホールのような性質をもつ。このコーシー地平面は空間的超曲面から法線方向にでる測地線の族がきめるマックスウェル集合(クリード集合、闘争集合)から発せられる光錐の包絡面となることが解る。マックスウェル集合は一般に特異点をもつ集合で、四次元が一般の空間的部分多様体への分割(滑層分割)を持つ事がしられている。したがって、それぞれの空間的部分多様体に沿った光錐の包絡面である光的超曲面の特異点がコーシー地平線の形状を決めるための第一歩となる。平成24年度の研究では、空間的超曲面のマックスウェル集合を決定する為に対応する焦点集合の特異点の特徴付けを行い、さらに一般余次元に沿った光的超曲面の特異点の特徴付けを与えることに成功した。また、関連する話題として、平坦なローレンツ空間形であるミンコフスキー時空内の空間的部分多様体に沿った光的超曲面の特異点の研究を実施し、特別な場合として、従来得られていた、ユークリッド空間や双曲空間内の部分多様体の焦点集合が得られることが解った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反ド・ジッター空間というブレーン宇宙論や素粒子物理学で近年活発に研究されている空間内の一般余次元の空間的部分多様体に沿った光的超曲面の特異点を研究する枠組みを与えたことは、研究目的である高次元空間内の事象の地平線に現れる特異点の研究を推進する第一歩である。さらにその副産物として、ミンコフスキー時空内の場合に、従来のユークリッド空間内や双曲空間内での、一見、事象の地平線とは関係ないと思われる対象物の特異点の 研究が特別な場合として得られたことは注目に値すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた成果に沿い、その続きとして反ド・ジッター空間内の世界膜と呼ばれる空間的部分多様体の1径数族からなる時間的部分多様体(ブレーン宇宙論では我々の属する時空間と見なされる)から発せられる、焦点集合の特異点の形状とその幾何学的意味について研究する。そのためには、平成24年度と同様に、幾何学、物理学、特異点論の専門家との研究打ち合わせが主な研究手段となる。また、平成24年度に得られた成果を、関連する研究集会などで発表し、その方面の専門家から問題点などの指摘をえて研究推進の参考にする必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究推進方策に沿って、国内外の専門家との研究打ち合わせのための、国内旅費、海外旅費、招聘がおもな使用計画となる。また、プレゼンテーションや数値計算が必要となる場合は関連ソフトウエアやコンピュータを購入する可能性がある。さらに、新知識を仕入れるためには、関連図書の購入も行う。
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