2013 Fiscal Year Research-status Report
高次元時空内の事象の地平線とラグランジュ・ルジャンドル特異点論
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24654008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉屋 周一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127422)
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Keywords | ブレーン宇宙論 / 反ド・ジッター空間 / 世界面 / 焦点集合 / ルジャンドル多様体 / 波面の伝播 |
Research Abstract |
平成25年度の実績として、前年度から継続して、反ド・ジッター空間内の世界面から出る、焦面を記述するための、幾何学的枠組みの構成を行った。反ド・ジッター空間はブレーン宇宙論、素粒子論、一般相対性理論などで重要なモデルを与える空間として知られている。この空間内の世界面と呼ばれる、空間的部分多様体の1径数族からなる時間的部分多様体は、ブレーン宇宙論では我々が属する宇宙(4次元時空)そのものと考えられる。この場合、反ド・ジッター空間が高次元宇宙のモデルとなり、我々の属する宇宙は4次元世界面と見なされる。Buossso とRandalはそのような状況の時に、世界面から発せられる、光的超曲面の焦点集合が、局在化された宇宙の境界を成すと言う、いわゆる「多元宇宙」の一つのモデルを与えると考えた。このモデルでは、光線は重力に対応している。ブレーン宇宙論では、我々の宇宙である4次元世界面の外には、重力以外の素粒子は伝播せず重力のみが伝播出来るものと考えられる。現代物理学では重力は光速で伝播すると考えられているので、その焦点集合の彼方には、すべての情報が届かないと見なされ、宇宙が局在化されていると見なされる。当研究では、このモデルを純粋に数学的に扱い、平成24年度の研究成果として反ド・ジッター空間内の空間的部分多様体から発する光的長曲面がルジャンドル多様体の波面として記述されることを示した。世界面は空間的部分多様体の1径数族なので、そこから光的超曲面の1径数族が得られる。したがって、それらは、波面の1径数族となり、波面の伝播理論でが適用出来ることに気付き、その枠組みを構成をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的とした、高次元宇宙論における事象の地平線の特別な場合として、具体的な反ド。ジッター空間内の世界面に沿った光的超曲面の族が構成する焦点集合の特異性に対して、波面の伝播理論が有効であろうことが確認された。一般の場合にもこの方向が有効であろう事が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られた成果に沿い、その続きである世界面の焦点集合の特異点を波面の伝播理論を応用して研究を進める。その際、その特異点の持つ幾何学的意味が数学的観点からは重要なので、世界面の(外在的)微分幾何学の枠組みを構成する。さらには、一般のローレンツ多様体内の世界面の焦点集合を研究する試みを行う。そのためには、平成25年度と同様に、幾何学、物理学、特異点論との専門家との研究打ち合わせが主な研究手段である。また、最終年度なので、これまでに得られた成果を関連する研究集会などで発表し、その方面の専門家等の指摘を得て、今後の研究課題の整備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
参加予定だった研究集会などの数が想定していた数より少なく、また、本務等で忙しかった為に、研究打ち合わせ等での出張予定がキャンセルになり、年度末頃までに、使用予定だった出張等の旅費を使用しなかったために次年度使用額が生じた。 平成26年度は、遠方(ブラジル、フランス等)での研究集会開催が予定されており、旅費が多くかかる予定である。また、関連分野の専門家の招聘、派遣を平成25年度より多めに予定している。
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