2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩瀬 則夫 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (60213287)
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Keywords | associahedra / multiplihedra / A∞圏 / A∞関手 / A∞代数 / A∞空間 / 分類空間 / operad |
Research Abstract |
A∞構造は様々な現象に特異的に表れる現象を記述する数理構造である。その始原となる現象としては、 n 個の対象の積が何種類あるかを数え上げる際に現れ、これを逆に見れば、一つの原子が n 個に分裂する過程が何種類あるかを数え上げる際に現れると考えても良い。これを数学的に捉える為に Stasheff の導入したオペラッドは associahedra と呼ばれ、筆者はその修士論文において、associahedra を変形することで、現在 multiplihedra と呼ばれるオペラッドの具体的な構成に成功した。本研究では前年度に、オペラッドの間のホモトピー論的な構造を具体的に記述し、A∞構造のホモトピー単位元の存在が厳密な単位元の存在を意味するという30年来未解決であった問題を解決できたと考えている。 さらに本研究ではA∞構造の圏論的な取り扱いを行い、ある意味で Grothendieck topos と同様な形式でA∞圏とその間のA∞関手の概念を導入することに成功した。もちろんこれらの概念に対しては、深谷賢治氏によって導入された同名の対象があるのだが、その純粋数学における形式的な姿は、基本的には代数の一般化として捉えることができ、これに対し本研究において構成したA∞圏を代数化して得られる対象は、実はさらに多くの構造が付随していることが分かる。それはA∞オペラッドの具体的な構造から自然に定まるものであり、ここから幾つかの構造を忘れることで深谷氏の導入したA∞圏に形式的には同等なものが導かれることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年来未解決であったA∞構造の単位元の問題にケリをつけることに成功したと考えている。その一方でE∞構造との関連については進んでいないのだが、圏論化を進める過程で、代数的な取り扱いにも成功しており、これはオリジナルのプランとは若干方向性が異なるが、得られた結果を重視すれば、当初の計画より進んでいる点と遅れている点が共にあることになり、どちらとも言えないのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
どうやらE∞構造との関連について調べるのは時間のかかる作業であるとの感触が得られて来ており、ここを後に回してむしろスペクトル系列の構成とホッホシルトホモロジーとの関連について先に考察すべきであると考え初めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度前半に予定していたポーランドと中国で参加の打診を受け、これを承諾していた各々2度ずつ計四度の旅行を、いずれも体調不良により中止にし、平成25年度10月以降にはある程度回復したものの、無理な使用は差し控えた為である。 これは前年の平成24年度の前期に一年分の講義と演習を集中してこなし、後期にサバティカルを取得して研究に集中したのであるが、その間に大学と事務上の連絡を取ることが困難な期間があった為に、続く平成25年度の前期に、特に入念な準備が必要な科目の講義が集中して割り振られたことに気付かなかったものである。これにより、平成25年度は4月から本務に集中する一方で体調が悪化し、断続的な体調不良が平成25年度後期まで続いたものである。 体調が完全に戻った訳ではないので、自分の出張よりむしろ、共同研究者に訪問してもらうことを考えている。具体的には、英国 Aberdeen 大学の Ran Levi 教授を九大に招待して、共同研究に当たる。Ran Levi 教授はサバティカルを取得しており、1ヶ月程度の九州滞在が可能であると共に、ホモトピー論の圏論的な取り扱いによる分類空間の理論の専門家でもあり、本研究において重要となる圏論的な枠組みにおける分類空間のコホモロジーの取り扱いについて多くの助言を頂けるものと期待している。 その一方で、平成26年度は韓国での ICM の開催が予定されており、その衛星集会を大連で開催することが決まっており、これにも世話人の一人として参加し、参加者の中で本研究に関連する研究者を積極的に招待したい。
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Research Products
(7 results)