2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 雅之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70280526)
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Keywords | 統計数学 / 確率微分方程式 |
Research Abstract |
拡散過程から得られる離散観測(データ数n、刻み幅h)を用いた、ドリフトパラメータや拡散係数パラメータなどの未知パラメータの推定や検定は基本的な推測問題であり、それらは必然的にモデル選択や非線形判別分析へと応用される。エルゴード的拡散過程に従う高頻度データは、通常、nh→∞、h→0に加えて、バランス条件n×(hの2乗)→0 という理論的な仮定をおく。実際問題として、5分刻みのような中頻度データの場合も考慮すると、一般バランス条件(n×(hのp乗)→0、pは2以上の整数)の下での統計推測法を考える必要がある。先行研究によって、一般のバランス条件の下での、最小コントラスト型推定量の構成およびその漸近的性質が解明されたので、それを検定問題に応用した。さらに、前年度に引き続き、拡散過程モデルの非線形判別分析の研究を行った。具体的には、2つの異なる拡散過程モデルがあり、データはそのいずれかから離散観測されたという仮定で、拡散過程モデルを判別する問題を取り扱った。離散観測は、nh→∞、h→0、バランス条件n×(hの3乗)→0の中頻度データを仮定した。2つの拡散過程モデルが異なるという設定は、拡散係数が異なる場合と、拡散係数は同じであるがドリフトが異なる場合の2種類が考えられるが、統一された非線形判別関数を構成して、それがどちらの場合でも一致性を有することを示した。また、その非線形判別関数の漸近分布を導出した。さらに、観測区間が固定された非エルゴード的拡散過程モデルに対して、拡散係数に対する判別分析を行い、一致性をもつ非線形判別関数を構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡散過程モデルに対して、一般のバランス条件(n×(hのp乗)→0、pは2以上の整数)の下で、高次伊藤・テイラー展開に基づく擬似尤度関数から導出される同時最尤型推定量を用いて検定統計量を構成し、その漸近的性質を示した。また、中頻度データにおける拡散過程モデルの非線形判別分析法の開発を行った。5分間隔の中頻度データに対しては、p=3とすれば、ある程度安定した結果が出ることが数値実験により検証された。高頻度データだけでなく中頻度データも取り扱うことができる統一的な統計的手法の開発は予定通りに進んでいると言ってよい。実データを用いた実証分析を行うためには、開発した統計推測法の計算効率を向上させる必要があり、更なる改良が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
中頻度データに基づくエルゴード的拡散過程モデルの最尤型推定法、ベイズ型推定法、擬似尤度比検定法、情報量規準に基づくモデル選択問題、非線形判別分析など、基礎的な統計推測法の研究がなされてきた。今後は先行研究で得られた理論的正当性(漸近的性質)を保持しながら、計算効率も向上できる統計推測法の開発に取組み、実データを用いた実証分析を行う。例えば、ドリフト推定と拡散係数推定には、最尤型推定法とベイズ型推定法のどちらも漸近理論においては同等であることが示されている。しかしながら、数値計算の観点から、最尤型推定法とベイズ型推定法のどちらのパフォーマンスがよいのか、またはハイブリッド型推定がよいのか等を検証することは中頻度データ解析を行う上で、非常に重要な問題であり、大規模シミュレーションによる研究も行う必要がある。さらに、エルゴード的拡散過程で得られた統計的推測法を、観測区間が固定された非エルゴード的確率微分方程式モデルのサンプリング問題に応用する研究も行う予定である。
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Research Products
(11 results)