2012 Fiscal Year Research-status Report
超離散化手法によるデジタル-アナログ-ハイブリッド数理モデルの構築
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24654028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50188025)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超離散化手法(アメリカ) |
Research Abstract |
本年度はまず第一に,超離散化手法に関連が深いマックス-プラス代数を用いた基礎的な時間発展系に関する研究を行った.具体的には,束の基礎演算で構成される1+1次元時間発展系の厳密解および漸近解の挙動について詳しく調べ,可解な束の方程式を収集した.束の方程式は変数を特殊化することでセルオートマトンやマックス-プラス方程式に帰着させることが可能であり,高い汎用性を持つ一群の可解な基礎方程式の存在が明らかになった.また初等的セルオートマトンの可解性の検証にも直接応用でき,初等的セルオートマトンの約三分の一がこの解析手法により,可解なタイプとして判定できた. 次に,粒子セルオートマトンと呼ばれるデジタル移流系に関する解析を行った.5近傍のセルオートマトンに対して,保存性を有する粒子系を探索し,それらが与える基本図について詳しく解析した.また,時間発展方程式のマックス-プラス表現と基本図との関連についても検証を行った.時間発展方程式をマックス-プラス表現で与えることにより,本来はデジタル系である粒子系を連続系に拡張することが可能となった. さらに4近傍の粒子セルオートマトンに確率変数を導入した系について,基本図の理論曲線式の導出を試みた.その際に,確率仮説をいくつか導入し,数値的にそれら仮説が正しいことを確認し,それら仮説を前提にすることで厳密な理論曲線式の導出に成功した.この結果は,同様の解析手法である非対称単純排他過程(ASEP)のグループのアプローチと全く異なる手法であり,今後の発展が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標は,連続モデルと離散モデルを融合させたハイブリッド型の数理モデルを構築することである.これに対して,超離散化手法を核にした現在の手法は,連続モデルと離散モデルの橋渡しをするとはいえ,連続と離散それぞれが独立にモデルを提供しているに過ぎない.この点を改良することが本研究の目的であるので,現在はまだその端緒をつかみかねている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,超離散化手法を応用したハイブリッド型数学表現の開発に取りかかる.従来の超離散化手法では連続モデルの極限をとることによって離散モデルを得ており,両者の離散性を同時に表現することは不可能であった.そこで,超離散化手法をデジタル・アナログ融合の観点から見直し,手法および理論の根本的な改良を行う.また,得られた知見をもとに簡単な構成の系を作成し,その解について理論解析や数値計算を詳細に行う. また,ハイブリッド型数学表現がもたらす新しい基礎数学理論の構築に取りかかる.超離散化手法が関わってきた可積分系理論をはじめとする諸分野の成果を参考にしながら,代数・解析・幾何の観点および情報数学など離散数学の観点から,数学表現がどのような理論に関わっているかを洗い出し,定義や定理等を順に構築していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ハイブリッド型数理モデルが想定する数理関連の研究者や超離散化手法の研究者と研究交流,情報収集を行うために旅費等を使用する.また,数値処理,数式処理による計算機実験を行うためのコンピュータおよび解析ソフトウェアを購入する.この作業にともなう謝金や消耗品費も適宜使用する.
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