2012 Fiscal Year Research-status Report
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24654032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小薗 英雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00195728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 行雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10107691)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Navier-Stokes 方程式 / Dirichlet積分 / エネルギー不等式 / 弱解の一意性 |
Research Abstract |
外部領域における定常Navier-Stokes 方程式の弱解の一意性とエネルギー不等式の関係を考察した.3次元外部領域においては,Leray により任意の外力に対して,Dirichlet 積分が有限な範囲ででエネルギー不等式を満たす弱解が少なくも一つ存在することが示されている.しかし,そのような弱解の一意性については,空間における弱3乗可積分ノルムが小さいという仮定が必要であった.またエルギー不等式の正当性に関してもDirichlet 積分が有限という範囲では未解決であり,例えば,解の弱3乗可積分ノルムが有限という付加条件の元で保障されるに留まっていた. 本研究では,Dirichlet 積分が有限という範囲であってかつ無限遠方に流れがある弱解について新たな知見を得た.実際,エネルギー不等式については,外力が1階偏導関数が自乗可積分という空間の双対空間に属していてさえいれば,任意の弱解に対してエネルギー等式が成立することを証明した.また,一意性については,無限遠方に流れがない場合と異なり,解そのものに対する小ささではなく,与えられたデータの小ささのみによって制御できることを明らかにした.すなわち,与えられた無限遠方の速度と, 1階偏導関数が自乗可積分である空間の双対空間に属る外力の対応するノルムとの双方が十分小さければ,弱解は一意的であることを証明した. この結果は期待できる定常Navier-Stokes 方程式の弱解の存在と一意性に関しては,最良の結果と言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調和解析学および特異極限と有限性の影響評価,乱流のもつ普遍的法則性の解明の2研究課題については,専門誌への掲載論文数そのレビューから見て,一定の評価を得ているといってよい.特に,数学解析学的手法の研究および流体力学的な手法双方とも,無限領域における流れの解析については顕著な研究成果を挙げている. 乱流の大スケールの普遍性に対する計算領域サイズの影響評価については,平成24年度は研究に着手することは出来なかった.問題解決の典型として,他の研究では例のない十分大きな計算領域によるDNS を用いてその計算領域サイズの影響を評価することが今後の課題として残された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,調和解析学の手法を用いてナビエ・ストークス方程式の数学的理論を発展させることに留まらず,方程式が記述する流体運動,特に乱流の解明に迫る.数値流体力学においてこれまで推進されてきたきた大規模直接数値シミュレーションを駆使して挑戦する計算科学の手法に,無限大や極限操作を得意とする調和解析学の手法が融合することにより,巨大自由度・巨大スケール・強い非線形性を持つ乱流に対して,普遍法則の発見とより信頼性のある情報の抽出を可能にする.また逆に乱流に対して得られた新なた流体力学的知見から,その多くが理工学に導出を起源とする非線形偏微分方程式の今後の研究に対して確固たる方向性と指針を得る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主要経費は旅費からなる.実際,数学の研究は研究者同士の討論によって促進されることを考えれば,旅費の確保が重要な役割を果たす.互いの情報交換が,研究者を刺激し共同研究へと発展することが数学の特徴であることを鑑みて,まず研究代表者と分担者の名古屋と東京の往復旅費を確保する.一ヶ月半に一回程度,名古屋と東京間で2泊3日の行程で1年間8往復分として70万円を計上する. 研究の進捗状況を国内外に発信するため“乱流場と非線形”をテーマとしての小規模なワークショップを開催する.開催日数は2日間,国内研究者講演4名,外国人研究者2名が適当である.講演者,研究協力者および参加者のそれぞれの出張旅費として,国内旅費30万円,外国旅費50万円,合計800万円を計上する.ワークショップの具体的な運営としては,単なる個人の研究の発表の場を提供するのではなく,最近の流体の基礎方程式の研究発展の紹介,また乱流研究に対する解説などを取り入れたい.更に,実関数論的手法の導入も考慮する.
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