2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654032
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小薗 英雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00195728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 行雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10107691)
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Keywords | Navier-Stokes 方程式 / 物体を通り過ぎる流れ / 回転流体 / エネルギー不等式 |
Research Abstract |
回転する障害物の周りの定常Navier-Stokes 方程式の解の存在と一意性について研究を行った.より具体的には3次元空間において障害物が回転し,かつ回転軸と同じ方向に並進運動する場合に,その外部領域における非圧縮性粘性流体のNavier-Stokes 方程式の定常解の存在と一意性を考察した. 実際,回転の角速度と並進速度,外力を与えられたデータとし,それらが十分小さければ一意的な解が存在することを証明した.ここで,外力はNavier-Stokes 方程式のスケール不変な関数空間である弱3/2-乗可積分空間であり,構成した解のクラスは一階の偏導関数が同じ関数空間に属するものである.ここで注意すべきことは,一意性については解そのものの小ささを仮定していることである.実際,与えられたデータがスケール不変な関数空間において小さければ,小さな解が存在することは証明できるが,同じデータに対して大きな解が存在する可能性を否定できない.すなわち,たとえ与えられたデータが小さいとしても,解の大きさを制御できるかどうかは未解決である. 一方で,回転運動を伴わない並進運動のみの場合,即ち物体を通り過ぎる流れの場合は, 無限遠方の速度が小さくはあるがゼロではないという仮定のもと,小さな外力の場合は,Dirichlet 積分有限な解は一意的に存在する定理を証明した.この定理においては,解の大きさは与えたらデータによってのみ制御可能であり,一意性が必然的に得られる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調和解析学および特異極限と有限性の影響評価,乱流のもつ普遍的法則性の解明の2研究課題については,昨年平成24年度と同様に専門誌への掲載論文数そのレビューから見て,一定の評価を得ている.特に,数学解析学的手法の研究および流体力学的な手法双方とも,無限領域における流れの解析については顕著な研究成果を挙げている. 乱流の大スケールの普遍性に対する計算領域サイズの影響評価については,平成25年度にようやく研究に着手することが出来た.問題解決の典型として,他の研究では例のない十分大きな計算領域によるDNS を用いてその計算領域サイズの影響を評価することを開始したが,今後より早い展開が望まれる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,調和解析学の手法を用いてナビエ・ストークス方程式の数学的理論を発展させることに留まらず,方程式が記述する流体運動,特に乱流の解明に迫る.数値流体力学においてこれまで推進されてきたきた大規模直接数値シミュレーションを駆使して挑戦する計算科学の手法に,無限大や極限操作を得意とする調和解析学の手法が融合することにより,巨大自由度・巨大スケール・強い非線形性を持つ乱流に対して,普遍法則の発見とより信頼性のある情報の抽出を可能にする.また逆に乱流に対して得られた新なた流体力学的知見から,その多くが理工学に導出を起源とする非線形偏微分方程式の今後の研究に対して確固たる方向性と指針を得る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主要経費は旅費からなるため研究者の出張計画の変更により,資金の執行が暫定的になる.それ故,次年度に使用額が生じることはやむを得ない. 本研究の主要経費は旅費からなる.実際,数学の研究は研究者同士の討論によって促進されることを考えれば,旅費の確保が重要な役割を果たす.互いの情報交換が,研究者を刺激し共同研究へと発展することが数学の特徴であることを鑑みて,まず研究代表者と分担者の名古屋と東京の往復旅費を15万円と計上する.研究の進捗状況を国内外に発信するため“乱流場と非線形”をテーマとしての小規模なワークショップを開催する.講演者,研究協力者および参加者のそれぞれの出張旅費として30万円を計上する.
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