2012 Fiscal Year Research-status Report
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24654035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松崎 克彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 複素解析 / タイヒミュラー空間 |
Research Abstract |
漸近的等角写像の歪曲率の減衰オーダーと境界値である擬対称写像の微分オーダーの関係,および対応する等角写像のシュワルツ微分, 対数微分のノルムとの関係を研究した単葉函数論における伝統的な結果を見直した.微分同相写像群の微分共役問題に取り組むときの最初の問題点は,微分オーダーの条件をいかに利用するである.Becker 等による conformal sewing や擬等角拡張に関する複素平面上の単葉函数論における研究成果を応用し,問題を漸近的等角写像の評価に読み替えることを行なった.とくに Pommerenke-Waschawski における擬円周を幾何学的に特徴づけるアールフォース3点性質の定量化および Anderson-Becker-Lesley の手法を見直すことにより,シュワルツ微分, 対数微分のノルムの減衰オーダーから擬対称写像の微分オーダーを導出する方法を得た. 微分同相写像群が等長的に作用し,かつその作用の固定点の存在が保証される空間が必要である.以前の研究においては漸近的等角写像全体の空間では固定点の存在が保証できないことがわかっていたため,新たに単位円板上の p 乗可積分な正則2次微分形式からなるバナッハ空間を考えた.2乗可積分な場合はタイヒミュラー空間のベアス埋め込みを通じて Cui, Takhtajan-Teo による Weil-Petersson 計量の研究があるが,目標の結果の証明のためには,その一般化である p 乗 Weil-Petersson 計量をもつ普遍タイヒミュラー空間を導入する必要があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた定理の主張は正しくないことが研究の途中で判明した.そのままでは大幅に研究計画の変更が必要となるところであったが,バナッハ空間の幾何ではなく複素解析的議論に立ち返ることにより,少しの修正で正しい主張を得て,証明をすることができた.年度の後半ではこの新しい結果を積極的に講演することにより,研究課題の目標へ向けての議論が活発に展開しはじめた.よって全体的にみればおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
等長変換群が有界軌道をもって作用する空間において,軌道の外心の一意性が保証される条件をさがし,固定点の存在を証明することを目標とする.微分幾何においてこの原理は Bruhat-Tits の理論により顕在化している.Ballmann は非正曲率完備なリーマン多様体の概念を測地距離空間に一般化したアダマール空間において,任意の有界集合の外心の一意性を証明した.アダマール空間は非正曲率性のひとつの定式化である CAT(0) 空間を含む広範な対象である.一方,函数解析においては,上記の原理は一様凸性をもつバナッハ空間において成り立つことが知られている.一様凸性からは再帰性が従い,共役空間の性質(弱コンパクト性等)が利用できる.p 乗可積分な正則2次微分形式からなるバナッハ空間と Weil-Petersson 計量をもつ普遍タイヒミュラー空間は,それぞれ,一様凸空間とアダマール空間となり,ともに有界軌道をもつ等長変換群には固定点が存在するが,p 乗 Weil-Petersson 計量をもつ普遍タイヒミュラー空間に対しても拡張することが必要である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究集会での講演を多数予定していたが,9月以降に議論の問題点が発覚し,予定をキャンセルした.そのために出張旅費の使用ができなかった.その後修正に成功したため,次年度はその結果を広く公表するために前年度分の研究費も使用する予定である.現時点では5月に名古屋大学,6月に龍谷大学,南京大学(中国),9月に島根大学への出張,セミナーおよび研究集会参加,講演が決まっている.
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Research Products
(10 results)