2013 Fiscal Year Annual Research Report
チューリングの拡散誘導不安定化再訪-解集合の大域的構造の視点から
Project/Area Number |
24654037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 泉 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40154744)
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Keywords | 拡散誘導不安定化 / 定常解の分岐 / 特異摂動解 / 大域的構造 |
Research Abstract |
出発点となるTuring の1952年の論文が書かれた時点では,非線型問題を系統的に研究するための数学的道具は殆どなく,また,反応拡散系におけるパターン形成が,実際に自然界に存在するかどうかも明らかでなかった.いわば,預言の書であった.その20年後あたりから,数学的な研究が本格化したが,当時の主な道具立ては「特異摂動法」と「分岐理論」であった.前者は非線型項の大域的構造を用いて解を構成するのに対し,後者は定常解の近傍で新たな解を見つける方法である.(定数定常解が不安定化するという)Turing の論文は,後者の立場に近く,非線型項の局所的な構造だけが使われ,その意味で普遍性をもっていた.そこでパラメータ空間で定数定常解からの分岐点を Turing点と呼ぶ人も現れるようになった.しかし,我々がシミュレーションで目にするのは,分岐点から遠く隔たった領域であり,また,分岐がない場合でも非自明解が存在し得る.たとえば,定数解はいつも安定であるが,一方の拡散係数が非常に小さいときにパターンが発生するということも起る.これは,Turing が云う空間的に一様な状態が不安定化することの一つのバリエーションではないか.つまり,定数定常解が大きな擾乱に対して不安定化すると解釈できるのである.実例を探すために,対象を拡げて結晶成長モデルなどの解析を行っている研究者を交えたワークショップを開催した. このような観点から,複数の定常解が存在する場合にそれぞれの解が引きつける初期値の範囲調べるため,数値実験を行ったところ,実際は,空間的に一様な定常解に収束する初期値がかなりたくさんあることが見えてきた.定数から非常に離れた安定定常解に収束する初期値の特徴を定量的に述べるのは,いまところ困難である.また,空間的に均一でない媒質中のパターン形成も分岐とは無関係に起こり得ることを証明した.
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Research Products
(2 results)