2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋上 和弘 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (60262151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 斉 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (70192771)
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Keywords | トポロジー / 結び目 / 双曲幾何 / クラスター代数 |
Research Abstract |
量子二重対数関数は古典極限において二重対数関数に帰着する。3次元双曲幾何における理想四面体の体積が二重対数関数で表されることを鑑みれば、量子二重対数関数が双曲幾何となんらかの関連性があるものと期待される。一方、クラスター代数が近年活発に研究されているが、そのq変形された量子クラスター代数において量子二重対数関数は重要であることが知られている。したがって、量子二重対数の幾何的性質を明らかにするには量子クラスター代数が有効であると期待される。 昨年度に引き続き、クラスター代数と双曲幾何との関連性についての研究を行った。クラスター代数においては箙、クラスター変数、y変数に対する変異という操作が用いられるが、こうした変数や変異の双曲幾何における役割を一点穴あきトーラス束や二橋結び目を例にとって解析した。その結果、変異を用いた結び目補空間の双曲体積の新しい計算方法を開発することに成功した。 すべての結び目は組みひも群を用いて記述できるため、二橋結び目に限らないより一般の結び目についての同様の計算方法を確立するためには、組みひも群とクラスター代数との関連性を明らかにする必要がある。特に、R行列とよばれる組みひも関係式の解を構成することが最も重要である。本年度はこの課題に取り組み、組みひも群をうまく記述できる箙を明らかにし、変異を用いてR行列を構成することにも成功した。その結果、一般の結び目に対する、クラスター代数をもちいた双曲体積の計算方法を提唱することができた。 また、分担者は八の字結び目の色つきジョーンズ多項式の振る舞いを量子二重対数函数を用いて調べ、基本群表現との関連を詳細に解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子クラスター代数を用いて量子二重対数関数と双曲幾何学との関連性を明らかにすることを目的としている。すでに、古典的なクラスター代数と双曲幾何との関連を明らかにし、一点穴あきトーラス束や二橋結び目などの特別な例に対する具体的な結果について論文を執筆し、国際専門誌 (Journal of Knot Theory and Its Ramifications) に掲載された。また、いくつかの国際研究集会においても発表し、研究成果を国内外に発信している。 さらに、より一般の結び目についても研究を進め、クラスター代数を用いた組み紐群の記述に関する新しい成果を得ている。結果を論文にまとめ、国際専門誌に投稿中である。 また、量子二重対数函数を用いた量子不変量の漸近的振る舞いの解析も行っており、さまざまな結び目に対し基本群との関係を明らかにしてきた。 以上のように、本研究計画は順調に進捗しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究において、クラスター代数を用いた双曲幾何学の新しい記述を試みてきた。その結果、二橋結び目や一点穴あきトーラス束といった特別な双曲多様体について、クラスター代数を用いた不変量の新しい計算方法を提唱した。さらに、一般の結び目についても適用するため、クラスター代数を用いた組みひも群の記述を試みた。最終年度にあたり、これらの知見を踏まえて量子クラスター代数を用いて組みひも群の研究を行う。研究計画最終年度に当たり、研究成果を国内外へ積極的に発信していく。 1.量子クラスター代数における変異は量子二重対数函数を用いて構成される。本研究において既に得られている(古典)クラスター代数を用いた組みひも関係式の解を自然な意味で量子化し、量子二重対数函数と組みひも群との関連性を明らかにする。また、古典極限との比較から、組みひも群と双曲幾何学との関係をさらに探求する。この際、計算機による数式処理を適宜利用し、研究を効率よく推進する。 2.3次元双曲幾何学における理想四面体の双曲体積は、二重対数函数によって与えられる。量子不変量と双曲体積との関係を示唆する、カシャエフらによって提唱された予想があるが、そこでは量子二重対数函数の1の冪根での値が重要であるように思われる。量子二重対数函数を用いて1で構成した、組みひも関係式の解の構造を詳しく解析する。特に、1の冪根における解の性質を調べ、カシャエフが与えた組みひも関係式の解との関連を調べる。ここでは、数値計算を行い、すでに知られている結び目の不変量との関連を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究当初の予定より、計算機購入費用が安くすんだため。 最終年度にあたり、代表者・分担者の研究成果発表のための旅費として使用予定である。
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Research Products
(9 results)