2014 Fiscal Year Annual Research Report
反応拡散方程式系におけるアトラクタの崩壊と遷移過程の新しい理論の確立
Project/Area Number |
24654044
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
森田 善久 龍谷大学, 理工学部, 教授 (10192783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 香奈子 茨城大学, 理学部, 准教授 (10451519)
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大域アトラクタ / 散逸力学系 / 反応拡散方程式系 / 保存則 / アトラクタの崩壊 / 遷移ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
大域アトラクタが一点からなる系,すなわち単一の漸近安定な平衡解からなる反応拡散系の力学系としての構造は単純である.それにも拘わらず,遷移ダイナミックスにおいて空間パターンが劇的に変化するメカニズムを「アトラクタの崩壊」という観点から明らかにし,その数学的理論の構築を目指すのが研究目的であった. 通常の反応拡散系の解が生成する散逸系の力学系では,アトラクタは構造が安定で小さな摂動によって大きく構造を変化させることはない.そこで保存則をもつ反応拡散系に着目し,摂動によって確かに1点のみからなるアトラクタになることを,具体例について数学的に証明した.こうして「アトラクタの崩壊」が,保存系では小さな摂動によって実現でき,数学的に意味づけることができる.次に遷移ダイナミクスの研究では,葉層構造をもつ不変多様体が摂動によっても局所的に構造を変化させないとう性質と,解軌道の摂動に関する連続性を用いて,遷移ダイナミクスの一部が数学的に証明できることを示した.常微分方程式の平衡点が拡散によって不安定化しチューリングパターンを生み出すというメカニズムは, ある保存系でも見られる.しかし,摂動によって保存則が壊れ元の系の平衡点が消滅しても,チューリングパターンが遷移過程で発生することがこの結果より示される. 研究の実施過程で,アトラクタを単純に崩壊させるような摂動だけでなく,摂動によって新しい性質をもったダイナミクスを考えることの重要性にも気づき,最終年度はこの方向の研究も並行して進めた.その結果,2変数の保存則のある反応拡散系にもう一つ変数をうまく組み合わせると,チューリング的なパターンの遷移過程と空間的に一様な振動が繰り返される周期振動が発生し,アトラクタの構造が質的に変化する例を構成できた. 以上得られた成果は現在論文として投稿中である.
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