2012 Fiscal Year Research-status Report
波長変換材と液体キセノンを用いた多目的検出器開発の基礎研究
Project/Area Number |
24654055
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上島 考太 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (80605379)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 波長変換剤 / シンチレーション光 / 二重β崩壊探索 / 暗黒物質探索 |
Research Abstract |
キセノンと波長変換剤を用いた検出器の基礎研究を行った。キセノンはそれ自身が大発光量のシンチレータであるが、発光波長が175nmであるために、直接光センサーをキセノンに浸し、シンチレーション光を読み出すのが主流になっている。しかし、光センサーに含まれる放射性不純物がバックグラウンド(BG)となり、検出器全体を低BG化するのが困難であった。波長変換剤を用いることで、キセノンのシンチレーション光を可視光として読み出すことができる。波長変換剤を蒸着した容器にキセノンを入れ、カムランドのような直径10mを超える大型の検出器の中心にセットすることで、極低BGな環境を作り出し、二重ベータ崩壊探索の感度を大きく向上できる。 1、 波長変換剤を蒸着したアクリル容器の設計 波長変換後の波長が光電子増倍管(PMT)の感度波長とよく一致するTPB(テトラフェニルブタジエン)を波長変換剤の候補とした。研究計画ではパラタフェニルも波長変換剤の候補であったが、特にTPBは液体アルゴンを用いた暗黒物質探索実験でよく使用されており、液体アルゴン(-186度)のシンチレーション光128nmを高い効率で可視光に変換できることが知られているため、TPBを用いて設計を行った。 蒸着量は液体アルゴンで最も変換効率の高いTPB量とした。 2、シンチレーション光測定容器の設計 波長変換剤を蒸着したアクリル容器をセットし、シンチレーション光はPMTで検出する。外部からCs137 などの γ線源を照射し、シンチレーション光を検出できるようなセットアップの設計を行った。液体キセノンはー100度 と低温であるため、通常真空断熱層を加えて外部との熱のやり取りを断たなければならないが、本研究では液体窒素とノベック7100という-100℃でも凍らず透明な冷媒を用いて設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波長変換したキセノンのシンチレーション光を測定する容器の設計、波長変換剤を蒸着した容器の設計を行った。当初の予定ではガスラインの制作もH24年度に行う予定であったが、H25年度に行うこととした。ガスラインの設計は終了しているため、制作は比較的短期間のうちに完了する予定である。 H25年度は実際にキセノンを検出器に導入し、キセノンのシンチレーション光を波長変換し、PMTで観測する予定であり、本研究はほぼ当初の予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
TPB蒸着量を設計通りにアクリルに蒸着し、TPBを蒸着したアクリル容器に液体キセノンを導入し、PMTを用いて、シンチレーション光を観測し、発光量の評価を行う。また別途TPBをポリスチレンに溶かした新型シンチレータを開発し、波長変換剤入りの容器を制作する。この容器に液体キセノンを導入することで、シンチレーション光は容器内側で可視光に変換される。TPBをアクリルに蒸着した場合とTPBをポリスチレンに溶かした場合での発光量の評価を行う。 また収集光量を出来る限り増やすため、検出器にESRと呼ばれる可視光領域で反射率が95%以上ある反射シートをセットする。 またBGの評価についても行い、将来0ν2β探索、宇宙暗黒物質の探索のための極低バック化を達成出来るか評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)