2012 Fiscal Year Research-status Report
微細加工技術と高抵抗物質による、単一電子イメージングデバイスの開発
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24654067
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
越智 敦彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40335419)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / 粒子測定技術 / イメージング / 微細加工技術 |
Research Abstract |
本年度は、カーボンポリイミドを高抵抗電極として用いた高抵抗陰極型μ-PICの試作を行った。電極構造を工夫し、誘起電荷による信号読出しを用いることなどにより、従来のμ-PICと比較して、比較的安定に高増幅率で動作させることが可能になり、単一電子の信号を読み取り可能な領域まである程度迫ることができた。しかし、高電場での動作時に、検出器素材内での放電・導通が見られる障害が頻発するようになったことから、製造プロセスや、電極素材の見直しについても検討が必要であることが判明した。 また、μ-PICで用いている各電極素子の信号を読み出すための、多チャンネルかつ高感度の前段増幅器、及びデータ収集システムの導入も行った。MPGDの国際研究組織であるRD51とのコラボレーションにより開発された、APV25ハイブリッドチップ、及び Scalable Readout System を用いることで、単一電子由来の小さな電荷でも読み出し可能なシステム構築を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的のうち、本年度の実施計画としては、電極に用いる抵抗性導電素材の検討、及び検出器デザインの検討の二つが主な柱であった。このうち前者は、当初用いたカーボンポリイミド素材が比較的良い性質を示したため、今年度はこれを用いることによる試作を行い、放電率抑制などで非常に良い結果を得た。また、後者の検出器デザインについては、当初、μ-PICの陰極上に直接抵抗素材を接合していたものに対して、新たに抵抗素材による陰極と、誘起電荷読出しの電極を分離するアイディアを実現し、これにより、単一電子測定可能領域まであと少しの部分まで迫ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの試作では、製造プロセス上の問題から、検出器内部での放電破壊が問題になるケースが多く出てきたため、今後の推進方策としては、電極素材形成方法の見直しによる、試作品製造プロセスの簡略化を行い、大面積で安定した検出器の動作を目指す。このために特に現在は、カーボンスパッタリングによる電極作成手法に注目しており、今後はこれを用いた試作・試験を行っていく。その結果として、まずはガイガーモードでの検出器動作を目指す。 一方、シリコン検出器の読み出し回路をベースとした多チャンネル高感度のデータ収集システムが、RD51とのコラボレーションにより開発されたことから、これを用いたイメージングも行っていく。検出器動作が、当初想定していたガイガーモードに届かないとしても、この高感度の増幅器により、単一電子由来の信号を得られることが期待できる。 これらを用いて、研究最終年度の25年度後半には、評価のために各種粒子線を用いた検出器動作試験・評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、スパッタリングを用いた新たな製造プロセスによる検出器の試作を行う。また、多チャンネルの読出しが可能な、個別の信号線を持ったタイプの検出器の試作も行う。これらの試作、及び動作に必要な周辺の装置に要する金額は、約100万円である。また、X線やレーザーを用いた動作テストを行うため、機器の移動や旅費が必要となる。さらに、国内外の国際会議で、成果発表を行う。これらのための旅費や装置運搬経費には、約40万円必要であると見込まれる。
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