2013 Fiscal Year Research-status Report
ダークエネルギー探索の為のフーリエ変換を使った重力レンズ効果の精密測定
Project/Area Number |
24654074
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 伸彦 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50290854)
|
Keywords | 重力レンズ |
Research Abstract |
平成25年度には、すばる望遠鏡にハイパーシュプライムカム(HSC)・カメラを搭載して広く深い銀河のサーベイが開始される筈であったが、真空漏れ、取り付け困難、などの理由でサーベイ開始がほぼ一年遅れ、平成26年3月24日から4月2日にかけて、ようやく5夜の観測が行われ、サーベイが開始されたが、あいにく天気が悪く、結局1.7夜分の観測データしか得られなかった。現在はそのデータをデータ解析パイプラインを使用して解析している最中である。今年度の研究計画では、平成24年度に研究して最適化したシアー測定法を活用して、予定されていた約100平方度の深い多色のサーベイデータに適用する筈であったが、残念ながら敵わず、現在「待ち」の状況である。 本年度、研究者が参加している宇宙背景放射偏光観測実験POLARBEARのデータと、HSCのデータのクロス・コリレーションを取る事により、重力レンズ効果を検出出来るのではないかと思いつき、すばる望遠鏡の平成26年前期のオープンユース公募に応募した。提案は、通ったが観測時間がアロケート出来ないと言う事で残念ながら観測は出来なかった。つい先日平成26年後期の公募に提案して、現在審査中である。この提案に関して、現在POLARBEAR実験が持っているデータとHSC1夜の観測でどれ位の有意性が得られるか検討したところ、3.5シグマの有意性を持って、重力レンズ効果が検出出来る事がわかった。もし検出出来れば、世界で初めて、CMB偏光観測と、可視光に寄るシアー場の観測の相関を検証する。もし本提案が認められれば平成27年1月にHSCを使用して観測を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は宇宙に存在するダークマター (DM) の分布を時間の関数として測定し、その変化から、宇宙の加速膨張のメカニズムダークエネルギー (DE))の本質に迫る事である。DM の分布を測定するためには、重力レンズ効果を用いる。これは、質量中を光が通って来ると光の経路が曲がる効果である。遠方にある銀河の形が、重力レンズ効果によって歪み、その歪みを測定する事によって途中にある質量の分布がわかる。より遠くの銀河を調べれば、より遠くの宇宙の質量分布がわかる。宇宙膨張はフリードマン方程式によって記述される。DM の分布を3次元的に再構成し、宇宙膨張の加速度が、時間の関数(遠い=早い)となっているかを調べ、DE の性質に迫る。この為には大量のサーベイデータが必要である。当初の予定では、平成24年より、広く深いサーベイを開始し、これまでに100夜程度の観測データが得られている筈であったが、現在得られているのは1.7夜分である。現在の予定では平成26年に20夜、サーベイの為の観測日が割り当てられているだけであり、本研究の進捗に大きな影響を及ぼしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
すばる望遠鏡による深く広いサーベイの進捗が大幅に遅れており、シアー場の測定のみによって宇宙論パラメタを決定する事は難しい。平成25年度より開始した、宇宙背景放射偏光観測による重力レンズ効果の検出、及びHSCによる可視光のデータとのクロスコリレーションの検出は世界初の試みであるので、推進して行きたい。 本研究の提案時に示している様に、弱い重力レンズ効果は、宇宙の大規模構造を調べるのに最も有力な方法の一つである。特に宇宙背景放射における重力レンズ効果は、赤方偏移Z~2において最も感度が高く、この時代は非線形の進化の影響が少ない時代である。宇宙背景放射偏光観測は南極とチリで現在いくつもの観測が行われており、つい最近BICEP2グループが、原始重力波によるBモード偏光を発見したという報告をした。この直前にPOLARBEARグループは、CMBの観測のみによる、重力レンズ効果によって生じたBモード偏光を観測したと報告した。更に暫く前、SPTpolグループがCMBの観測と、ハーシェル望遠鏡による宇宙赤外光背景放射(CIB)の観測との間に相関があるとの報告をした。本研究では、現在すばる望遠鏡オープンユースにPOLARBEARで観測したのと同じ空の領域をHSCで観測し、その2種類の全く系統誤差の異なるデータの間に相関があるかを測定するという提案をしている。もしこの研究提案が通り、来年1月に一夜の観測時間が与えられ、その日の天気が良かったならば、POLARBEARが既に2年近く観測している5度×3度の領域を後半夜二回、HSCで観測し、15平方度の領域で光学的重力レンズ効果を測定し、POLARBEAR実験のもつBモードのマップとの相関を取る。もし全てがうまく行けば、約3.5シグマの有為性を持って、クロスコリレーションの検証ができる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すばる望遠鏡におけるHSCカメラによる広く深いサーベイが遅れており、ハワイでの観測も不要となり、助成金の使用が遅れている。 平成26年度には、ハワイでのHSC観測、チリアタカマ高地でのPOLARBEAR実験に参加するための旅費として使用したい。
|