2013 Fiscal Year Annual Research Report
スピンコヒーレンスの新規検出法の実証と電子スピン高速制御への展開
Project/Area Number |
24654079
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
足立 智 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10221722)
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Keywords | スピンコヒーレンス / スピン位相 |
Research Abstract |
スピンコヒーレンス研究は半導体スピン物性の中心トピックスであり,今なお盛んに研究されている.そこではハンル効果と時間分解ファラデー(カー)回転が主に用いられている.これらは磁場下でのスピンコヒーレンス(縦スピン緩和ではなく横スピン緩和)のア ンサンブル平均を測定することができる.しかし零磁場下,異方性・不均一広がりのある系での真のスピンコヒーレンスの直接的精密測定法はこれまで実現されていない.本研究は物質中の電子(または正孔,原子核,励起子)の持つ最大のスピンコヒーレンスを引き 出すことを目的に,スピン位相回折格子の概念の確立と実証を目指している. H24年度において,目的としていたスピン位相回折光子の形成および円偏光励起による核スピン分極形成を確認したので,応用研究として,H25年度はCdTe/CdMgTe単一量子井戸中の残留電子を用いて,そのスピン分極形成ダイナミクスの研究を時間分解カー回転法を用いて行った.そこでは残留電子スピン分極の負の初期位相が観測された.正で観測された先行研究があったが,この位相シフトについては今まで発生原因は解明されていないものであった.我々は形成ダイナミクスを詳細に追跡し,負の初期位相が負の荷電励起子の速い正孔スピン緩和に起因するものであることをモデル計算と実験から突き止めた.H25年度の結果は,"Negative initial phase-shift of Kerr rotation generated from the building-up process of resident electron spin polarization in a CdTe single quantum well"として学術雑誌に投稿準備中である.
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