2013 Fiscal Year Research-status Report
質量勾配をもつ非一様系での偏在的原子振動モードであるグレードンの検証
Project/Area Number |
24654080
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩佐 和晃 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00275009)
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Keywords | フォノン / 質量勾配物質 / 中性子散乱 / X線回折 |
Research Abstract |
本研究は、質量密度の勾配を持つ物質中に偏在する新しい格子振動状態として理論的に提唱された「グレードン」(J. J. Xiao, K. Yakubo and K. W. Yu: PRB 73 (2006) 054201, 224201)の中性子散乱による実験的検証に挑戦することを目的とする。Si-Ge 混晶系などが一方向に質量勾配が存在する物質と考えられる。反転対称性の破れにより格子振動の進行波異方性や偏在が期待できるグレードンを、物質内部まで到達してフォノン励起を観測できる中性子散乱によって検証する。さらに勾配磁気系におけるスピンダイナミクスでのグレードンの検証に発展させる。 Si を濃度傾斜させてドープした Ge 単結晶の提供を受け、本研究課題を本格開始する以前の試験研究を発展させる予定であった。しかし日本原子力研究開発機構の研究炉が震災以来再稼働せず、さらに平成25年にJ-PARCも稼働されず、計画した中性子散乱実験ができなかった。 そこで以下にあげる本課題に関連する結晶格子振動研究を実施した。カゴ状物質TbB6における非調和フォノンの放射光X線非弾性散乱による研究を実施し、一連の重希土類元素をホウ素カゴ中に含むRB6でのユニバーサルな動的格子不安定性を明らかにし、日本物理学会で成果発表した。またその動的性質に関連して、DyB6でこれまでに知られていなかった新たな長周期構造への相転移を発見し、強相関電子系国際会議SCES2013等で成果発表を行った。さらにR3Co4Sn13 (R = La, Ce)の純良単結晶を作成し、本研究で整備しているX線回折装置を用いて明瞭な構造相転移を見出した。またリエントラント金属-非金属転移を示すPr1-xCexRu4P12の構造変化と電子状態に関する共著論文を完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が管理責任者となっている中性子散乱施設(JAEA研究炉JRR-3)の再稼働が遅れている上、平成25年5月から平成26年2月までJ-PARCの中性子散乱施設も停止した。このため計画していた実験が実施できていないため、進捗状況に若干の遅れがある。一方、SPring-8での高輝度放射光X線非弾性散乱によるカゴ状物質TbB6の異常フォノンや構造相転移の新たな知見を得ることに成功し、本研究課題に関連する成果を得つつある。平成26年2月にJ-PARCが稼働し始めたので、本研究課題の候補物質を検討して問題点の解消に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
J-PARCの加速器中性子源が平成26年2月に再稼働後、早速に中性子利用実験を再開し、上記のR3Co4Sn13 (R = La, Ce)のSn原子がつくるカゴ状格子に関連する構造相転移と強相関電子物性の研究を開始した。過去のこの物質に関する報告に比べて詳細な結晶構造相転移と電子物性の情報を得ることに成功しつつある。また再起動後のJ-PARCにおける実験環境を確認することができたので、本萌芽研究における課題の実験申請を準備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中性子散乱施設の稼働停止により計画した実験が行えなかったので、旅費および実験準備費用の支出が少なく、次年度使用額が生じた。 平成26年2月以降、J-PARCでの中性子散乱実験が再開し、さらに平成26年度前半分として提案した実験課題が一部採択されたので、当地に滞在しての研究活動が可能となる。この費用に充当する計画である。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Newly Proposed Inelastic Neutron Spectrometer POLANO2013
Author(s)
Tetsuya Yokoo, Kenji Ohoyama, Shinichi Itoh, Junichi Suzuki, Kazuaki Iwasa, Taku J Sato, Hiroshi Kira, Yoshifumi Sakaguchi, Takashi Ino, Takayuki Oku, Keisuke Tomiyasu, Masato Matsuura, Haruhiro Hiraka, Masaki Fujita, Hiroyuki Kimura, Toyoto Sato, Junichi Suzuki, Masayasu Takeda, Koji Kaneko, Masahiro Hino, Suguru Muto
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn. Supplement A
Volume: 82
Pages: SA035-1-5
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Basic Concepts of Polarisation Analysis for Neutron Chopper Spectrometer POLANO at J-PARC2013
Author(s)
K. Ohoyama, T. Yokoo, S. Itoh, J. Suzuki, K. Iwasa, T. J. Sato, H. Kira, Y. Sakaguchi, T. Ino, T. Oku, K. Tomiyasu, M. Matsuura, H. Hiraka, M. Fujita, H. Kimura, T. Sato, J. Suzuki, H. M. Shimizu, T. Arima, M. Takeda, K. Kaneko, M. Hino, S. Muto, H. Nojiri, C. H. Lee, J. G. Park, S. Choi
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn. Supplement A
Volume: 82
Pages: SA036-1-6
DOI
Peer Reviewed
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