2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24654084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雄一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60451788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 行志 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20466775)
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Keywords | ナノチューブ・フラーレン / 光物性 / 物性実験 / 円二色性 |
Research Abstract |
2013年度は、単一の単層カーボンナノチューブにおける円二色性について、波長依存性の測定を継続しつつ、さらに多くのデータを必要とする課題に取り組んだ。まず、波長依存性については昨年度の結果が再現され、広い波長領域においてあまり依存性がないことが確認されたが、吸収偏光度が小さくなるE12共鳴において円二色性がやや弱くなることが分かった。また、カーボンナノチューブの軸と励起光の進行方向の間の角度が円二色性に与える影響について調査した。その結果、光軸とカーボンナノチューブの軸が45度付近において円二色性が最大となり、平行または垂直の場合には円二色性が消失することが明らかになった。角度によって符号の反転も生じるが、測定した全てのカーボンナノチューブが同一の符号を示した。さらに、単層カーボンナノチューブはカイラル指数により対称性が異なるため、円二色性のカイラル指数依存性についても調査したところ、どれも類似の波長依存性を示すことが判明した。 これらの結果は、当初想定していたナノチューブの構造の反転非対称性に由来する円二色性では説明できないものであるため、データの解釈手法を再構築した。外因性キラリティという光の波数ベクトルによる反転対称性の破れが円二色性を発生させる機構を提案し、基板表面で生じる偏光変換により実験結果が説明できることを示した。また、この機構によると基板の存在が円二色性に必要となるため、カーボンナノチューブの架橋幅が大きくなるほど円二色性は弱まるはずである。そこで、円二色性の架橋幅依存性の調査を行ったところ、想定したほどの大きさではないものの、円二色性の減少を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的であった単一カーボンナノチューブにおける円二色性の発生起源の解明はほぼ達成できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた実験結果は、当初想定していたナノチューブの構造の反転対称性の破れに由来する円二色性では説明できないものであり、光の波数ベクトルによる反転対称性の破れによるものであることが明らかになった。今後は若干の追加実験および成果発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度に、単一の単層カーボンナノチューブにおける円二色性について、角度依存性およびカイラル各依存性を調査し、その発生機構を明らかにする予定であったが、データを蓄積していったところ、理論的な予想と大きく異なる結果を得た。そこで、計画を修正してデータの解釈手法を新たに構築しなおし、追加測定を行なうこととしたため、未使用額が生じた。 当該研究費は、追加実験に必要な消耗品と設備使用料、および成果発表に必要な経費を中心に支出する計画である。
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Research Products
(21 results)