2012 Fiscal Year Research-status Report
位相制御ラマン分光法を用いた色素・半導体界面における電子移動ダイナミクスの解明
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24654086
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251396)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 色素増感太陽電池 / 電子移動 / 位相制御コヒーレントラマン分光法 / フェムト秒ポンプ・プローブ分光法 |
Research Abstract |
シリコン系に替わる太陽電池として、半導体表面に有機増感色素分子を吸着させた「色素増感太陽電池」が注目を集めている。色素増感太陽電池の効率は、主に、色素から半導体への電子移 動特性によって決まるものと考えられている。経験的には、カルボキシル基を持つ色素分子が半導体表面によく吸着し、その結果、電子移動効率が高いことが知られてきた。本提案では、フェムト秒ポンプ・プローブ分光法に、本提案者が独自技術をもつ単一ビーム位相制御コヒーレントラマン分光法を組み合わせることにより、吸着分子の動的な構造変化をモニターしながら、電子移動ダイナミクスを追跡することを目的とする。 平成24年度は、吸着前の増感色素分子を試料として、ラマンスペクトルの測定を行う。増感色素の半導体表面への吸着部位として考えられているカルボキシル基は、1000~ 2000cm-1 の周波数領域に分子振動のモードが観測される。当初計画では、フェムト秒パルス光源の帯域をフォトニッククリスタルファイバーで広帯域化し、その広帯域光に最適化された位相制御装置に改良する予定であった。しかし、広帯域モード同期チタンサファイアレーザーからの直接出力で1500cm-1以上の振動モードが測定できる位相制御コヒーレントラマン測定装置が準備できる目処が立ったため、その位相制御装置の設計製作に計画変更した。 一方、測定対象とする資料分子については、まずローダミン系を選定した。実際に色素増感太陽電池を製作して、増感色素として機能する色素を選定し、その色素分子をアルコール類に溶解させた溶液に対して、ラマンスペクトルの測定を試みた。広帯域モード同期チタンサファイアレーザーの導入が平成25年度にずれ込むため、今年度は連続波発振の近赤外固体レーザーを本予算で購入し、自発ラマン散乱スペクトルの測定を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では、吸着前の増感色素分子をアルコール類に溶解させた溶液を試料として、広帯域光を用いた位相制御コヒーレントラマン分光法によるラマンスペクトルの測定を行うこととしていた。溶液中の分子と吸着した分子とで変化が予想されるカルボキシル基の同定まで試みる予定であったが、用いるレーザー光源に計画変更があったため、未だ位相制御コヒーレントラマン分光法による測定を開始できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解測定の準備段階として、半導体表面に吸着した増感色素分子のラマンスペクトル測定を早急に行う。自発ラマン散乱測定を先行させ、新しいレーザー光源が導入された後に、位相制御コヒーレントラマン分光を速やかに実行する。その後、当初計画にあった単一ビーム位相制御コヒーレントラマン分光法に、通常のポンプ・プローブ分光法を組み合わせ、色素分子の励起状態における振動状態を時間分解測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に購入を計画していた一部光学部品について、仕様を見直す必要が生じたため、平成25年度に改めて購入することにした。未使用額についても含めて、平成25年度予算はミラー類、マウント類、非線形光学結晶、試薬類などの消耗品の購入に充てる計画である。
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Research Products
(1 results)