2013 Fiscal Year Annual Research Report
位相制御ラマン分光法を用いた色素・半導体界面における電子移動ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
24654086
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251396)
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Keywords | 色素増感 / 電子移動 / フェムト秒ポンプ・プローブ |
Research Abstract |
シリコン系に替わる太陽電池として、半導体表面に有機増感色素分子を吸着させた「色素増感太陽電池」が注目を集めている。経験的には、カルボキシル基を持つ色素分子が半導体表面によく吸着し、その結果、色素から半導体への電子移動効率が高いことが知られてきた。本提案では、フェムト秒ポンプ・プローブ分光法に、本提案者が独自技術をもつ単一ビーム位相制御コヒーレントラマン分光法を組み合わせることにより、吸着分子の動的な構造変化をモニターしながら、電子移動ダイナミクスを追跡することを目的とする。 平成25年度は、吸着前の増感色素分子をアルコール類に溶解させた溶液を試料として、広帯域光を用いた位相制御コヒーレントラマン分光法によるラマンスペクトルの測定を目指したが、カルボキシル基の同定に成功しなかった。測定手段の検出限界のさらなる向上が必要であることがわかった。 そこで、ラマン測定をいったん保留し、今年度は光励起後の色素から二酸化チタンへの電子注入過程を観測することに方針を切り替えた。二酸化チタンへの電子注入は色素内での励起状態緩和と競合する過程なので、色素の励起状態緩和を観測することで電子注入に関する情報を得る。カルボキシル基を持ち、二酸化チタンの色素増感作用をもつRhodamineBを試験色素として用いた。RhodamineBの時間分解分光光源として、モード同期Yb:KYWレーザーの第2高調波520nmを用いた。 フェムト秒ポンプ・プローブ分光測定の結果、RhodamineB単体では、電子励起状態が数 psで緩和することが測定できた。輻射寿命はナノ秒のオーダーと推定され、今回観測されたピコ秒の緩和は、光励起後に分子内で起こる電荷移動過程によるものと考えられる。続けて、二酸化チタン微粒子上にRhodamineBを吸着させた試料に対して、同様の緩和寿命測定を行って、結果を比較する必要がある。
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