2012 Fiscal Year Research-status Report
ESRによる有機半導体光デバイス中のキャリア観測法の開拓
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24654087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 新一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20291403)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 共役高分子 / フラーレン / 電子スピン共鳴 / 光伝導 / 有機電界効果トランジスタ / 有機光電変換デバイス |
Research Abstract |
本年度は、共役高分子/フラーレン複合体薄膜における光キャリアのESR観測について以下の研究を行った。まず、光誘起ESR信号の検出感度向上のため、ESR測定システムとレーザー光源を同期・積算するシステムを開発し、従来測定できなかった室温における短寿命の光キャリア成分の観測に成功した。このシステムにより、高移動度の高分子PBTTT/PCBM複合体における光キャリアの再結合過程を観測し、立体規則性チオフェンP3HT/PCBM複合体と同様に2個の正電荷と2個の負電荷による4体再結合過程を確認するとともに、P3HT系よりも再結合定数が大きいことを明らかにした。PBTTT系の再結合がより速いのは、P3HT系よりもキャリア移動度が高いことを反映していることが示唆された。 一方、新しい太陽電池材料として注目されている、ドナー/アクセプター構造をもつ低バンドギャップ導電性高分子PCDTBT/PCBM複合体について、正・負キャリアの移動度を電界効果トランジスタ(FET)構造により直接評価した。移動度のPCBM混合比依存性を測定した結果、PCDTBT上の正キャリアはPCBM混合による移動度の変化がごくわずかであることがわかった。これは、P3HT系ではPCBM混合により移動度が顕著に低下することと対照的であり、PCDTBTはアモルファス的でPCBM混合による構造変化が少ないのに対し、P3HTは結晶性が高く構造変化が大きいためと考えられる。このため、正・負キャリアの移動度がバランスする質量比は、P3HT/PCBM複合体では1:1、PCDTBT/PCBM複合体では1:4近傍となり、それぞれ光電変換効率が最大となる濃度とほぼ一致することがわかった。この結果は、正・負キャリアの移動度のバランスが高効率太陽電池の設計上重要な因子であることを実験的に示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、概ね当初計画のとおりに進展しており、4件の雑誌論文、11件の学会発表などを通し、成果発表を行った。特に、新規な低バンドギャップ型有機太陽電池材料として注目されているPCDTBT/PCBM複合体において、有機FET構造を用いて正・負キャリヤの移動度を直接決定できたことで、太陽電池の高効率化をもたらす材料作製の指針が得られつつあり、インパクトのある結果として注目されている。また、半導体レーザー光源とESR測定システムの同期をとり、室温でより短寿命のキャリヤ再結合過程を観測することを可能としており、導電性高分子/PCBM複合体の光生成キャリヤの再結合過程を低温から室温までシームレスに測定することが可能となりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに開発してきた時間分解光誘起ESR(LESR)装置を用い、導電性高分子/フラーレン複合体における光キャリヤの再結合過程を、光伝導法を併用しつつ低温から室温まで測定する。また、これらの再結合に及ぼす外部電場の影響を、サーフェスセル型、及びサンドイッチセル型のデバイス構造を用い、電圧の有無によるLESR信号の変化から観測する。さらに、結晶性の高い導電性高分子で観測されている4分子再結合過程の起源を解明するため、電場誘起ESR(FI-ESR)法を適用する。4分子再結合過程は、高分子上でキャリア(ポーラロン)がスピンを持たないバイポーラロン(ポーラロン対)を形成することにより起こると考えられる。そこで、高分子単体やそのPCBM複合体薄膜を用いたFETデバイスを作製し、高濃度の電荷蓄積に伴う非磁性キャリヤの形成の有無をスピン-電荷関係から明らかにする。 一方、光電変換効率や再結合速度の支配因子であるキャリヤ移動度を求めるため、複合体薄膜を用いたFETデバイスを作製する。それとともに、光電流とESRの同時測定を行い、ESRから得られるキャリヤ濃度と光電流値から移動度を決定する手法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(15 results)